「優勝するのは、阪神、巨人ではなく、ヤクルトかもしれない」
セ・リーグの優勝争いは、僅差のなかに3チームがひしめく混戦状態となっている(8月30日時点)。阪神は主砲・大山、佐藤がこぞって打撃不振、巨人もエース菅野の復調が遅れている。
そこで、投打ともにそつなく戦力を整えているヤクルトを推す声が強くなってきた。そんなヤクルトの「投手のカギ」を握っているのは、後半戦の開幕選手も務めた2年目の奥川恭伸投手だろう。
「8月27日のDeNA戦、3者連続のホームランを浴びて敗戦投手となりました。ホームランを浴びるまでは、自己最速の155キロをマークしていたんですが」(スポーツ紙記者)
高津監督は「今は色々なことを経験し…」と意に介さなかったが、こんな指摘も出始めた。
「これで、奥川が今季打たれたホームランは9本。全員、右バッターなんです」(球界関係者)
3者連続被弾は宮崎、ソト、牧。3人とも右バッターだ。改めて調べてみたが、3月28日の初被弾は阪神・マルテ、その後も広島・鈴木誠也(4月8日)、千葉ロッテ・中村奨吾、同・レアード(6月8日)、阪神・梅野隆太郎(7月1日)、DeNA・宮崎敏郎(8月15日)と、右バッターばかりだ。
もっとも、エキシビションマッチの東北楽天戦では、左打ちで星稜高の先輩にもあたる島内宏明に一発を浴びているが…。奥川は右バッターに被弾する傾向があるのは間違いないようだ。
「奥川の持ち球はスライダー、フォークボール。右バッターの内角を突くボールは直球しかありません。だから、右バッターはしっかりと踏み込んでフルスイングしてくるのでしょう」
これは、甲子園でヒーローになった投手の「乗り越えなければならない壁」とも言えそうだ。近年、高校球界で活躍したピッチャーに持ち球を聞くと、必ず出るのが「スライダー」で、カーブが得意だと話す投手はほとんどいない。右バッターの顔付近を通過して大きく曲がるカーブがあれば、驚いて腰を引いてしまう。しかし、スライダーが変化球のメインになってからは、たとえ打てなくても右バッターは臆することなく踏み込んでくるようになった。
「今季は球速が増したことで3点台の防御率を維持できています」(前出・同)
右バッターの内角攻めについても勉強しなければならないだろう。“脱・甲子園のピッチング”ができれば、ヤクルトの大逆転も夢ではないのだが。
(スポーツライター・飯山満)