失業者が殺到!中国で横行する「売血ビジネス」とHIV感染拡大の深い関係

 西日本新聞が7月21日、「新型コロナウイルスの感染拡大以降、経済停滞が続いた中国で違法性の高い代理出産や売血が相次いでいる」というショッキングな記事を配信した。 

 記事によれば、新型コロナ発祥の地である武漢市の公共施設で、「卵子提供 10日で1万〜5万元(約15万〜75万円)」「代理出産15〜25万元(約230万〜380万円)」といった誘い文句が、携帯電話番号とともに記されていたというのだ。

 さらに「コロナの影響で仕事がなく、あっても1日100〜200元(約1500〜3千円)しか稼げない。1回500元なら悪くない」と「献血者募集 400cc500元(約7500円)」の広告に応募した男性の談話を掲載。売血バイトも横行していると伝えた。

 中国政府は血液の売買を禁じているが、医療現場では輸血用血液の不足が慢性化していることもあり、中国国内には多くの売血ブローカーが存在する。血液を必要とする患者に、血液提供者を仲介。提供者はその友人を装うことで摘発を逃れているという。もっとも、患者には裏で多額の報酬を要求することになるのだが、この記事中で取材に応じた「北京在住の血頭(売血ブローカー)」は「血液提供者に400ccで500元払っても、患者には4倍の2千元(約3万円)で売れる」と語っている。

 だが、中国在住のジャーナリストは、「売血により、またHIVが蔓延する可能性は大きい」と指摘したうえで、こう語る。

「輸血用の血液が不足していた中国が、貧しい農民から有償で献血を買い上げる、という売血政策をしていたのは、90年代半ばのこと。結果、各所に設置された売血所には連日多くの人が殺到しました。ところが、経費節減のため、売血所では、採血に使う注射針を使い回ししていたんです。たとえば50人分の血液を採取したら、同じ型の血液を集めて遠心分離機にかけ、血漿部分や血小板を献血用として、残った赤血球は採血者に再注入するという成分献血がとられていた。そのため、採血者の中に一人でもHIV感染者が含まれていれば、50人全員が感染する結果になり、エイズが爆発的に広まってしまったんです」

 そこで、中国政府は売血を禁止。ただ、国策によりHIV感染者を急増させたことを認めたくなかったのか、当局はHIV感染拡大の要因を、「性交渉による」と強調してきたという。「ところが、今度は薬物常習者の間で感染者が激増してしまったんです。そこで2017年、当局は国営新華社通信の報道を通じて、初めて感染拡大の要因を『注射器』と『血液による感染』とし、感染防止に向け本腰を入れたといういきさつがあるんです」(前出・ジャーナリスト)

 結果、国内における薬物依存中毒患者のHIV感染率は、2012年の0.2%から2017年には0.03%まで低下した。

 しかし、コロナ禍により,違法な売血が復活したとすれば、再びHIV感染が広がる可能性もある。

「先日、日本政府は外国人の入国制限の緩和をめぐり、中国や韓国、台湾など12の国と地域との間で、ビジネス関係者に限っての入国を相互に認める協議を始める、という報道がありましたが、さすがに中国人の入国を即解除することはないにしろ、近い将来再開されるはずです。つまり、その時はコロナだけではなくHIVウイルスも日本に持ち込まれる可能性についても注意を払わなければならないということです」(前出・ジャーナリスト)

 コロナで職を失った中国人のなかには「売血」だけにとどまらず、コストをかけず巨額の富を生むことができるとして「売血ビジネス」に参入する者も多いとされる。SARS、MERS、新型コロナ、そして、HIV……もう、いいかげん勘弁してほしいものだ。

(灯倫太郎)

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