そのヤクルトでは、39歳の五十嵐亮太がソフトバンクから復帰。35歳の寺原隼人も獲得し、野村氏が率いた頃の「再生工場」さながらだ。選手寿命が延び、ベテラン選手も数多く活躍するようになった近年の球界を、自身も45歳まで現役を続けた野村氏はどう見ているのか。
経験に勝る財産はないと言うからね。いいことだと思いますよ。
42歳で南海ホークスを辞めた時の話です。オーナーと社長に退団のあいさつに行って、大口を叩いたんだ。「私をクビにするのはあんたらの自由だけど、チームは絶対にダメになりますよ」と。2年後、あるところでオーナーにバッタリ会って、こう言われた。「野村君の言うとおりだったよ」。あれは最高に気持ちよかったね(笑)。
ただ、それくらいチームにとってベテランの存在が大きいのも確かなんだから。俺だってイチローじゃないけれども、「50歳まで現役を続けたいけど、できんもんかな」ってずっと考えてたんだよ。最後にいたのは西武だった。堤義明オーナーは一生懸命背中を押してくれたんだけど、肝心の根本監督がなあ‥‥。「やめろー、やめろー」っていう使い方をされたからなあ。
私の引退のきっかけは、まさにその〝根本采配〟。7回で1点負けていて、ワンアウト一、三塁、バッター野村。チャンスに打順が回ってきたんだよ。そこで代打を出された。鈴木治彦(現・葉留彦)って左打者だった。
ビックリしたね。ベンチに帰って「失敗しろ!」って願ったよ。その願いが通じて、4-6-3のダブルプレーで「ざまあみやがれ。俺にピンチヒッター出すなんて、監督失格や!」って思ったな。出された鈴木もやりにくかったやろ。そういうプレッシャーがあってセカンドゴロだったんじゃない?
でも、冷静になった時に、「ああ、そんなことを考えながら選手をやってたら、チームに迷惑がかかるな」って思い返して、引退を決めたんですよ。
イチローも引退を表明したね。でも、辞めるかどうかは本人の自由やからな。俺がどうこう言う問題じゃないよね。
最後に長嶋にエール? 会ってないし、状況も知らないからな。それ以前に、話しても合わないだろう。テスト生と天才じゃかみ合わない。おそれおおいですよ(笑)。