「上司にしたい戦国武将ランキング」を決定するにあたって、全国の20代から60代までの男女各1000人、合計2000人に対してアンケートを実施。「上司力」「尊敬度」「統率力」の3項目の総計を「総合力」として評価したところ、1位は徳川家康、2位は織田信長、3位は武田信玄という結果になった。
この上位3人プラスアルファについて、「週刊アサヒ芸能」の歴史顧問とも言える「真説!日本史傑物伝」連載中の歴史家・河合敦氏に通信簿をつけてもらおう。
■徳川家康<上司力:100点 尊敬度:90点 統率力:80点 忍耐力:200点>
三方ヶ原(みかたがはら)の戦いで信玄に惨敗して城に逃げ帰った時には、実は旗本も全員逃げて、いち早く城に戻った部下が「殿は死んだ」とか、「殿が恐怖で脱糞した」という噂を流したり、とんでもない部下ばかり。しかし、それらを全て許して、失敗を責めない点で、家康の上司力は100点。「徳川家康に忠義を尽くして重用されたい」(長崎県・47歳・男性)という人がいるのもうなずける。
家康が格別に優れていたのは「忍耐力」。信長、光秀、秀吉らが死ぬまでじっと耐えてきたガマン強さはずば抜けている。
■織田信長<上司力:50点 尊敬度:100点 統率力:95点 残酷度:300点>
先を読む先見性・革新度はピカイチなので尊敬度100点。ただ、ダメな者はすぐに見限る。これほど恐ろしい上司もいないので、上司力は50点。信長は自分の留守中にこっそり安土城を抜け出して遊びに行った侍女たち全員を殺害したり、自分の叔母を逆さ磔、裏切った兵隊を小屋の中に詰め込んで焼死させたりと、残酷度は300点に。
部下の柴田勝家、羽柴秀吉、明智光秀、滝川一益らを北陸、中国、畿内、関東に配置して競わせ、領地を拡大した統率力は群を抜いているので95点だろう。
■武田信玄<上司力:90点 尊敬度:90点 統率力:95点 土木力:90点>
敵をせん滅したり、奴隷として売り飛ばしたり、けっこうエゲツナイこともしているが、領民に対しては、河川の氾濫などを防ぐ治水工事、堤防(信玄堤)を造ったりもしているので、特記事項として土木力90点を追加したい。「甲陽軍鑑」には、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」という名言があり、人こそ城に匹敵するという考え方は、倫理的で道徳的。性格的に安定しているので、上司力、尊敬度は90点。信玄の一番の特徴は、計画性と冷静さ。敵地の地図を事前に入手して綿密に計画を立て、風林火山の言葉どおりに一気に攻め込んでいく戦略家で、統率力は95点。
■部下がラクできる度1位:上杉謙信
謙信は自分を神だと思っており、任せておけば一気に先頭を切って戦ってくれる。部下はそのあとをついていけばいいので、すごくラクができる。頼れる度でもナンバーワン。
■中小企業の社長度1位:真田昌幸、幸村父子
真田幸村は、真田十勇士のようにフィクションとして有名だが、むしろ上司力は、父親・真田昌幸のほうが上。昌幸は信玄に仕えながら、その死後は信長に仕え、信長が死んだあとは北条、上杉、豊臣、徳川と武将の間を渡り歩き、巧みにバランスを取りながら中小企業の社長としてうまく立ち回った人物。
■金バラマキ度No.1:石田三成
「三成には過ぎたるもの」と言われた石田三成の軍師・島左近。三成は浪人中の左近を訪ねて自分の禄高の半分という高額でスカウトし、部下にしたという。できる者に対してはバンバン金を配った。小姓時代からのつきあいの親友・大谷吉継に「何でも金で動くと思っているのは間違いだぞ。本当に大事なのは誠実さなんだよ」みたいなことを言われているが、給料を出し惜しみしないという点では、いい上司と言えよう。
河合敦:1965年、東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学(日本史専攻)。多摩大学客員教授。早稲田大学非常勤講師。歴史作家・歴史研究家として数多くの著作を刊行。テレビ出演も多数。主な著書:「早わかり日本史」(日本実業出版社)、「大久保利通」(小社)、「日本史は逆から学べ《江戸・戦国編》」(光文社知恵の森文庫)など。