4月21日、静岡放送のカメラが「あおり男」こと宮崎文夫容疑者の姿を捉えた。2019年7月に東名高速道路であおり運転をした疑いで再逮捕された宮崎容疑者。この日は警察に連れられて浜松市の東名高速道路で実況見分が行われた模様。手錠をかけられたと思しき手の部分にはボカシ処理が施されていた。コロナ対策でマスクを着用していたため、その表情はうかがえなかったが、立ち振る舞いから、かなり反省しているようにも見えた。
しかしなぜ静岡に? と疑問に思うかもしれない。というのも、この「あおり男」の顔を一躍全国区にしたのは2019年8月10日に茨城県で起きた「殴打事件」だ。常磐道の上り線で、会社員男性が運転する車を幅寄せや割り込みでむりやり停止させ、運転席の窓から1発、2発、3発…と、計5発のパンチを繰り出し、1週間のケガを負わせたのだった。この映像に多くの視聴者が戦慄を覚えたはずだ。その約1週間後、大阪市内の自宅マンション近くで、「自分から出頭させてくれ!」と大声を張り上げた逮捕劇もまた大きなインパクトを残した。
どうやら、宮崎容疑者はいまだ裁判にもかけられない状態だという。逮捕後の“足取り”を社会部記者が明かす。
「常磐道の殴打事件ではすでに水戸地検土浦支部は強要と傷害の罪で宮崎容疑者を起訴しています。しばらく茨城県警取手署に勾留されていましたが、今年1月には、愛知県岡崎市でトラックに対してあおり運転をした疑いで、愛知県警本部へ移送されました。さらに、あおり運転ではありませんが、知人男性に暴行を加えて3万円を盗んだ2年前の事件で大阪府警によって傷害と窃盗の疑いで書類送検されています。とにかく余罪がゴロゴロ出てくるので、そのたびに移送、移送の連続です。茨城から愛知、そして静岡と、“市中引き回し”のような状態にあると言っていいかもしれません」
2019年に「最凶ドライバー」として注目を集めた宮崎容疑者。事件発覚当初、ドライブレコーダーに映る高級SUVから推測されたように、マンション1棟を所有する資産家であることが判明したが、「一文無し」になったと報じるメディアもあった。
実際はどうか。宮崎容疑者が大阪市内に所有していた7階建てのマンションについて、地元の不動産業者はこう話す。
「親族から相続したマンションが競売にかけられたのは事実です。大手信販会社など複数の債権者が宮崎容疑者の持ち分を取得し、さらに昨年12月中旬には税務署が差し押さえ、債権者は財務省となっています」
ドライブレコーダーの普及に大きく貢献したと言われる宮崎容疑者だが、その社会的影響を考慮して「裁判員裁判」になる見込みが強いという。
「あれほど世間を騒がせた事件ですから、多くの傍聴希望者が裁判所に殺到するでしょうね。とはいえ、このコロナ禍では、クラスターにつながりかねませんし、裁判員が辞退するケースも想定できます。収入源だったマンションも失い、保釈金も用意できないとなれば、年内いっぱいは拘置所での生活を余儀なくされるかもしれません」(司法担当記者)
しっかりと罪を償う前に、すでに人生“ガス欠状態”になっていたようだ。
(倉田はじめ)