抜群の人気を誇る女性ジョッキー・藤田菜七子騎手が女性として初めてJRA通算100勝を達成したのは4月25日のことだった。新型コロナ感染拡大を防ぐための無観客開催でなければ、うら若き女性騎手は祝福の歓声に包まれたはずだが、藤田騎手はこう言って、ファンへ感謝の気持ちを示した。
「100勝達成までの道のりは、ケガなどもあってなかなか思うようにはいきませんでしたが、まわりの方々のサポートや応援のおかげで、こうして無事達成できたことに感謝しています」
さらに競馬ファンに向けて、「早くみなさまが競馬場に来場できるようになってほしいです」と一刻も早いコロナ終息への願いを口にしたのだった。
競馬専門誌の記者は語る。
「ルックスばかりに注目が集まりがちですが、藤田騎手といえば、とにかく馬への愛情が強いことで知られています。ファンの間でも語り草になっているのが、2017年秋のレース。ルクレツィア号に騎乗したのですが、ゴール直前で馬が心臓発作を起こして、前のめりに倒れてしまったんです。藤田騎手もその衝撃で、雨でぬかるんだコースに投げ出された形となりました。じつは心臓発作を起こした馬というのは、いつ暴れだすかわからず、普通ならその場から離れるところなのですが、彼女はぴったりとルクレツィア号に寄り添い続けたんです。今でも“神動画”として競馬番組で紹介されますが、そんな彼女の馬思いなところも、騎乗依頼が増えている理由ではないでしょうか」
けっして人気先行ではなく、実力に加えた“愛の力”で成し遂げた通算100勝の金字塔というわけか。一方で、スポーツ紙の競馬担当記者はこんな不安を口にする。
「確かに競馬場で見る藤田騎手は、輝いて見えますよ。しかし、彼女は本当に競馬以外のことは頭にないのか、オシャレには無頓着。昨年5月にある式典に出席した時などはシワくちゃのリクルートスーツを着て会場に現れて周囲を唖然とさせたことも……。この機会に、『専属スタイリストをつけてあげたら』なんて声があがっているのも当然かもしれません」
当面は「無観客」での開催が予想される中央競馬。競馬場の外でもファンを喜ばせるためにも、目一杯オシャレしてほしい。
(渡辺俊哉)