ここで新ヒロインの「身体検査」をすれば、まずは古川から。
「脳外科医の父を持ち、偏差値70以上という都内の中高一貫の進学校に通っていた才媛。ところが藤田騎手の活躍に触発されて、高校を中退。競馬学校に入学し直しています」(スポーツ紙競馬担当記者)
乗馬経験がほとんどない古川は競馬学校に在学中、騎乗中の事故で左肩を負傷。進級試験を受けられずに、留年も経験した。
「それでも諦めず、見事に卒業。情熱と根性は、今どきの若者には珍しいほどです。母親の影響で福山雅治のファンクラブに入っていたり、新選組が好きな『歴女』で、栗東トレセンでの研修の合間に京都で『聖地巡礼』するなど、20歳にしては趣味もシブめです」(競馬担当記者)
その根性を見込んでか、矢作師も自厩舎のGⅠ馬モズアスコットの調教に乗せるなど、大いに期待をかけているようだ。
対照的に永島は、いわゆる「競馬エリート」。父親は園田・姫路競馬で通算2043勝を達成した永島太郎騎手(現調教師)で、競走馬を身近に感じられる環境で育ってきた。
「乗馬を習い始めたきっかけも、園田競馬出身の岩田康誠(47)が父親と旧知の関係だったことで、(その息子の)岩田望来(20)のデビュー前の騎乗姿を見る機会があったからだとか。父親は現役時代に何度も中央の騎手免許試験にチャレンジし、ついぞ合格できなかったので、その夢を叶えたという意識もあるでしょう」(競馬担当記者)
肝心の「騎乗力」について、競馬ジャーナリストの東濱俊秋氏は、現状の騎乗センスを天秤にかけて、古川に軍配を上げる。
「例えば、6日の阪神8R。1枠1番の7番人気馬を、道中は内内で馬に我慢させて距離ロスを最小にし、直線で馬群を怖がらずに外に持ち出し、あわや馬券内の5着に導いた。翌日の6R(ダ1800メートル)でも、結果は6着でしたが、2コーナー付近で他馬と接触するアクシデントがあった後も、うまく立ち回れていました。デビュー時の藤田騎手よりもうまいと思いますよ」
ただ、師匠の30点の辛口評価が示す通り、
「6日の阪神5R(ダ1200メートル)は逃げ脚質の馬のスタートを決められず、後手後手で6着に沈んでいます」(専門紙トラックマン)
永島に関しては、デビュー週の緊張が騎乗にも影響したという声も。東濱氏が解説する。
「直線は外一辺倒という感じで、馬と馬の間に入るのを怖がっている印象を受けましたね。それと、必要以上に馬を動かしすぎ。レース中、半分ぐらいは馬をリラックスさせて走らせる『遊び』がないと、最後の踏ん張りが効きませんから」
永島自身は、
「反省点が多かったので、今週のダメだったところを振り返り、次の週に生かしていきたい」
と語ったが、専門紙トラックマンは、
「デビュー初戦は追い出しのタイミングさえもう少し早ければ、勝ってもおかしくないレースでした。すぐに勝てるかどうかは別として、光るものはあるように感じます」
騎乗経験を積んでいけば、花開く─。
*写真は古川奈穂