震災データが示す “避難所クラスター”の現実味と「関連死93%」の戦慄

 今からちょうど四半世紀、25年前の阪神・淡路大震災。亡くなった犠牲者は兵庫県だけで6402人にのぼったが、うち、建物の倒壊や火災などの直接的被害によらない、その後の避難生活などで3カ月以内に亡くなったのは919人で、全体の約13%がこの「災害関連死」によるものだったという。

「その災害関連死の死因の上位が、循環器系疾患や呼吸器系疾患、既往症の悪化などで全体の約93%を占めました。なぜならこの時、季節性のインフルエンザが流行していて、避難生活をモロに直撃する形になったからなんです」(大手紙社会部記者)

 実は震災のような大型災害では直接死より関連死の方が死亡者数を上回ることが多い。2004年の新潟県中越地震では、死者68人のうち、52人が関連死だ。最近では2016年の熊本地震でも死亡者272人のうち217人が関連死だった。

「インフルエンザウイルスは低温低湿を好み、12月から3月までに流行のピークを迎えます。インフルエンザが流行るこの時期に大型災害が起こって避難所生活が長引くと、いわゆる高度な『3密』の状態が長引くことになるので、クラスターによる関連死は当然増えることになります。3.11の東日本大震災はまさにこの時期で、やはり避難所でインフルエンザのアウトブレイク(感染症の突発的発生)が起こりました」(前出・大手紙社会部記者)

 オリンピックの関連で言えば、2008年の北京オリンピックはギリギリのタイミングでうまくこれを逃れた形になる。オリンピック直前の5月12日に四川で死者約8万7000人(国連発表)の大地震が発生した。同時にこの頃、新型インフルエンザの流行が危惧されていたが、無事、オリンピックは開催された。そして翌2009年、新型インフルエンザが世界中で猛威をふるい、パンデミックが宣言された。北京五輪はタイミング的に、震災とパンデミックから上手く逃れた格好だ。だが、今回の場合はパンデミックが先に来てしまった。

 言うまでもなく、日本は災害の多い国だ。地震の脅威は常にあるし、すぐ先には長雨と台風の季節が到来し、避難生活を強いられる地域住民が出るかもしれない。ところが現在は、ただでさえ新型コロナウイルスの患者の収容場所に困っているのが実情だ。阪神・淡路大震災で得た教訓から、災害と感染症の「ダブルパンチ」の怖さを指摘する専門家もいるが、その声が広く行き届いているようには見えない。この先、考えるだに恐ろしい事態が待っているかもしれない。

(猫間滋)

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