中国がパラリンピックのメダル獲得数で独走する理由とは

 フランス・パリで開催中のパラリンピックは、9月4日が終了した時点の国別メダル獲得競争で、中国が金62個を含む獲得メダル総数135個でトップをひた走っている。2位のイギリスが金33(計74)なので、その独走ぶりは明らかだ。

「オリンピックの陰に隠れて注目度の落ちるパラリンピックですが、中国は言わずと知れたパラスポーツ超大国なのです。20年東京大会を見ても、中国は金96個(計207個)で断トツの1位。その後にイギリス、アメリカと続くのは今回のパリ大会の途中結果と同様で、国別メダル獲得レースにおいてはまったくもって事前の予想通りの結果となっています」(スポーツライター)

 ではなぜ中国が強いのか。おおよその察しはつくと思うのだが、国をあげて強化に当たっているからだ。

「公開されたことでよく知られているのが、広州にあるナショナルトレーニングセンターで、パラスポーツ・アスリート専用の施設があるんです。そしてここに集められたパラスポーツのエリートは、『軍隊方式』と呼ばれる午前、午後、夜の3段階の練習メニューをこなす。その徹底した練習を経て、見事メダルを獲得した暁には数千万円の報奨金が支払われます。医師やマッサージ師も常駐し、敷地内のオフィス兼宿舎には常時200人前後の選手が老いも若きも寝泊りしていて、トレーニングに明け暮れるわけです」(同)

 これなら強いのも納得なわけだが、そこまで力を入れる裏には、やはりあの大国への対抗意識が明確に窺われる。

「パラリンピックの起源は1948年のロンドン大会にありますが、その時は戦争で負傷した兵士のリハビリテーションを兼ねたものでした。後の60年ローマ大会が第1回大会とされ、本格的になったのは88年のソウル大会で、それまでは1000人台だった選手数が3000人を超えるようになり、『パラリンピック』の名称もこの大会から使われるようになりました。ですがこの大会でのメダル獲得1位はアメリカで、中国は14位。それが2004年のアテネ大会から中国がトップに躍り出るようになり、以後、大国となったのです」(同)

 オリンピックではさすがに国家統制だけではアメリカになかなか届かず、自由で民主的・自発的な選手育成がモノを言う。ところが歴史が浅いパラリンピックでは、まだ可能というわけだ。事実、自由な発想やアイデアが求められるサッカーでは、習近平国家主席がサッカー好きでいくら強化に前のめりになっても結果は全くともなっていない。

 パラ大会での中国選手の躍進はもちろん賞賛に値するが、国家の思惑を考えると、どうしても霞んで見えてしまうというものだ。

(猫間滋)

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