「小泉米」が石破政権を救った?反石破派を沈黙させた“進次郎効果”

「死に体だった石破政権が、“コメ”と“小泉進次郎”で息を吹き返し、支持率も上昇した。もっとも、私から見れば、世論や野党攻勢以上に、“石破政権では参院選を戦えない”と動き出していた党内反対勢力が沈黙したことのほうが、石破自民党にとって最大の成果だ」

 そう語るのは、自民党の長老だ。これを受け、政治アナリストは以下のように指摘する。

「小泉氏が農相に就任したのは、江藤拓前農相の失言を受けての5月21日。そして備蓄米2000円台の販売が一部店舗で始まったのが5月31日。ちょうどこの販売初日と翌日にJNNの世論調査が行われ、結果、支持率が上昇に転じた。これは“進次郎効果”と見るべきです」

 実際、下落傾向にあった石破政権の支持率は、その調査で1.3ポイント上昇し、34.6%にまで回復した。

 冒頭の長老が語る「小泉米の最大効果」――それは、党内の反石破議員たちを沈黙させたことだった。政治部記者がこう証言する。

「小泉農相誕生前から、保守派は石破おろしの動きを活発化させていました。というのも、石破政権下では混乱が続き、高額療養費制度見直しをめぐって首相方針が二転三転、世論からも猛批判を受けた。さらにコメやガソリンの価格高騰が止まらず、3月の世論調査では大きく支持率を下げていました」

 そうした中、西田昌司参院議員は「今の体制では参院選は戦えない。総裁選で新たなリーダーを選ぶべきだ」と発言し、“石破おろし”の狼煙を上げ、以降、4月・5月と保守派を中心に動きはエスカレートしていった。

 そして西田氏らが担ごうとしたのが、昨年の総裁選で敗れた高市早苗前経済安全保障担当相。高市氏は5月、自ら旗揚げし、麻生太郎最高顧問を本部長とする勉強会を設立。西村康稔元経産相、萩生田光一元政調会長、茂木敏充前幹事長ら、反石破の大物議員約40人が結集し、反乱の機を虎視眈々と狙っていた。

 そんな絶体絶命の状況で、石破政権を救ったのが“コメ”と“小泉”だった。前出の自民党長老は振り返る。

「2000円備蓄米は一か八かの賭けでしたが、日本の流通・小売業界が一致団結して応援してくれた。さらに野村哲郎元農水相が『(森山裕幹事長に)小泉君をチクリとやっていただかないと』などと語った講演内容も、むしろ石破―小泉ラインへの応援歌になったようだ」

 その結果、混乱していたコメ価格は安定。ガソリンも補助金効果でリッター170円前後に下がり、参院選に向けて候補者たちの士気も回復。

「これで反石破グループも、無理やり引きずり下ろすことは難しくなった。今、世界が混乱する中、日本には政権の安定が最優先。トランプ政権とも腰を据えて交渉できるし、相手も本気になるだろう」

 そう語る長老だが、小泉氏への評価についてはこう続けた。

「小泉総理? それはまだまだ。あと一歩、二歩は必要だ」

 小泉氏の“後ろ盾”とされる菅義偉元首相グループ周辺関係者もこう語る。

「今回の定額備蓄米での活躍で、進次郎氏は総裁候補たちの中で一歩抜け出したのは事実。ただし“頂点”を目指すにはまだ課題がある。農業改革の推進、そしてもうひとつ――トランプ米大統領に気に入られ、『シンジロウ』と呼ばれながら交渉を重ねること。安倍元首相並みの信頼関係が必要です」

 そのためにはまず、石破政権を参院選で勝たせることが前提条件になる。そして、前哨戦となる都議選で自民党が一定の議席を確保できるかどうかが、小泉進次郎氏の真価を占う試金石となりそうだ。

(田村建光)

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