現在連載している「松尾国男大使の華麗なる半生」は今回休んで、自民党に復党した鈴木宗男氏のことを記す。
6月30日、鈴木氏は東京都内のホテルニューオータニで「叱咤激励する会」を開き、7月3日公示され、同20日投開票される参議院議員選挙に立候補する決意を表明した。
〈2002年に自民党を離党して以来、23年ぶりに復党し、参院選比例代表で公認となった。宗男氏は「晴れて、自民党に復党し、参院選に公認で臨めることをありがたく思っている。ひとえに皆さまのおかげ。心から感謝申し上げる」と来場者に頭を下げた。
「自民党を名乗るのはマイナスだ」との声もあるというが、宗男氏は「戦後80年、細川、羽田政権の10か月、民主党の3年間を除いて、66年は自民党政権だった。世界に冠たる日本になった政治があり、自民党議員の役割。今、自民党の印象が悪いからといって、出さないのは間違っている。時代に合わせて、改革をしていくのが真の保守」と自民党公認であることに胸を張った。
激動の政治家人生を振り返り、「不条理な社会をなくすのが政治家の務め。その仕事をやらせてほしい。天国と地獄を見て、国家権力、国策捜査と戦ってきた。何があってもひきません。正直者がバカを見ない社会にするのが、真の民主主義。昭和、平成、令和と生き抜いた政治家の選挙をしていく。最後の最後の戦い。悔いのない戦いをして、鈴木宗男の集大成にしたい」と意気込んだ〉(6月30日「東スポWEB」)
筆者もこの会合で挨拶をしたが、鈴木氏が今から23年前、自民党を離党したときの記憶が鮮明に甦ってきた。
この日の午後、野中広務衆議院議員(当時、故人)から電話があった。
「佐藤さん、鈴木が自民党を離党した。会見を見たか」
─見ていません。
「あなたも悔しいと思うが、これでいいんだ」
─といいますと?
「除名になると復党が難しい。鈴木はおかしなことはしていない。国のために一生懸命仕事をしていただけだ」
─それは私もよく解っています。北方領土絡みの疑惑は、事実無根です。
「しかし、おかしな風が吹いている。今ここで自分から離党すれば、いずれ自民党が鈴木に復党してくれと頼んでくる。私も鈴木には今後も自民党で活躍して欲しいと思っている。鈴木を復党させるために全力を尽くす。こういうことになって、外務省で鈴木に世話になった役人が次々と裏返っていく。鈴木も淋しい思いをしていると思う。あなただけはずっと鈴木のそばにいてくれ。ロシアのことできちんと鈴木を支えてくれ」
─もちろんです。
あれから23年以上が経った。この時間はいったい何だったのかときつねにつままれたような思いだ。石破茂首相が鈴木氏の復党に積極的だったのは、日ロ関係に同氏の人脈と知見を活用しようとしているからだ。できるだけ早いタイミングで石破首相個人代表として鈴木氏が訪ロし、プーチン大統領と会談する必要がある。
佐藤優(さとう・まさる)著書に『外務省ハレンチ物語』『私の「情報分析術」超入門』『第3次世界大戦の罠』(山内昌之氏共著)他多数。『ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされるのか』が絶賛発売中。