いよいよ花粉の飛散が始まり、街中でも早咲きの桜を目にする季節になってきた。これからは卒業や入学、入社と、何かと生活環境が変化する季節。しかも、暖かくなったと思ったら極端に寒い日もあって、その寒暖差が結構なストレスとなる。そのため、実は春というのは1年で最も心や体に様々な症状が現れる季節でもあるのだ。
特に春は朝と昼との気温差が大きい。体温を調節する自律神経は気温の変化によって上下するため、その差が大きければ大きいほど過剰に働いてしまう。結果、それが繰り返されることで誘発されるのが、頭痛や肩こり、食欲不振、倦怠感、さらに下痢や便秘、不眠といった症状。これがいわゆる、寒暖差疲労と呼ばれるものだ。
加えて、これに気圧の変化や生活環境の変化が加わって起こるのが「春バテ」と呼ばれる症状。移動性高気圧の影響もあり、春は低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わる。その気圧の高低の落差に、体のバランスを保つ三半規管などが集中する耳の奥の「内耳」が過剰に反応。自律神経に影響を及ぼし、交感神経を刺激する。つまり「春バテ」は、寒暖差疲労に加え、気圧や生活環境の変化などがプラスされて起こる症状というわけなのである。
そのため、春バテ防止に大切なのが、規則正しい生活習慣と食事。自律神経の乱れは体内時計の乱れにつながるため、朝起きたら朝日を浴び、白湯を一杯を口にするといい。そうすることで、動きが鈍い胃や腸が適度に刺激され、消化を助け、代謝機能を上げてくれる。そして、朝食をしっかり食べることで体内時計を整える。寝る時間はまちまちでも、同じ時間に起きて朝食を食べることで「時差」があった体内時計が元に戻る。そのため少量でもいいので朝食は必ず摂るべき。また、出かける前に時間があれば、体を動かすことも血流改善や代謝アップになるため、家の周りを散歩したり「ラジオ体操」をするなど軽い運動を心がけることも、春バテ防止には重要な方法だ。
ただ、春先は気圧の変化で自律神経の切り替えがうまくいかず、本来、交感神経が働いて活発に動けるはずの日中に副交感神経が優位になり「だるさ」「眠さ」を感じる場合もあるはず。そんな時は我慢せず、机に突っ伏してでも、公園のベンチでも構わないので5~10分程度“昼寝”をすること。この昼寝効果により、自律神経の切り替えが正常に戻る。ただ、長時間の昼寝は夜の睡眠を妨げるためNG。30分以内であれば「春バテ」に大きな効果を生むため、我慢せずに昼寝することをしたい。
さらに、ビタミン不足にならない食事を心がけることも大きなポイントだ。繰り返すが、春バテの原因は様々な要因による、自律神経の乱れだ。ビタミンAには副交感神経を整え、リラックス効果を生み出す作用があるため、それらを多く含む鶏肉やうなぎ、鮭、人参などもおすすめ。また、神経の働きに対し重要な役割を担っているのがビタミンB群なので、B1が多く含まれる豚肉やかつお、卵、にんにく、玄米ごはんなどを意識して摂るようにしよう。
ただし、ビタミンB群は水に溶けやすいという特徴を持ち、調理のときに栄養が失われやすい傾向があるので、おすすめなのが鍋やシチュー。水溶性のビタミンも、鍋やシチューにしてしまえば効率よく摂れ
寒い冬が終わり、ポカポカ陽気になるのはありがたい。だが、「春バテ」が急増する季節であることも事実。なんとか知恵と知識で「春バテ」を乗り切ろうではないか。
(健康ライター・浅野祐一)