史上最悪の山火事をネタに“政敵”を攻撃し始めたトランプ次期大統領の「悪手」

 米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山火事は、発生から10日となる1月17日も消火活動が続いている。これまでに少なくとも25人が死亡、焼失家屋は1万2000棟を超え被害総額は20兆円、今もおよそ8万8000人に避難指示が出されている。

 アメリカ史上最悪とも言われる今回の山火事だが、20日に就任するトランプ次期大統領も気が気でないようだ。カリフォルニア州知事や自治体を強く批判した。

「これこそ悲劇だ!知事がスメルトという小魚の保護に水を使ったから、ロスでは消火用の水がないんだ。なんて酷い話だ」

 スメルトとは、カリフォルニア州の河口域に生息するワカサギ種の野生魚で絶滅危機にあるという。州は今年、スメルト保護のためロサンゼルス市に供給する水を制限し、これが今回の消火水不足を招き山火事を拡大させたとトランプ氏は非難したのだ。外信部記者が言う。 

「先の大統領選で圧勝したトランプ氏だが、カリフォルニア州はどうしてもトランプ氏が勝てない民主党が圧倒的に強い州。そのうえカリフォルニア州のニューサム知事は次期大統領選で民主党の有力候補と目されている。そのためトランプ氏は、この火事をきっかけに政敵に痛手を与える思惑もあったのではと囁かれている」

 トランプ氏の発言に乗じて保守系のFOXニュースも山火事の数カ月前に消防予算が大幅に削減されたと報じた。もちろんこれに対しニューサム知事は「2019年から消防予算を2倍にしている」と猛反論している。

 だが、消防予算についてはロサンゼルス市長に対しても責任を問う声が高まっており、消防局の予算を大幅削減していたことが「CNN」や「NYポスト」など複数のメディアが明らかにしている。現地メディア関係者の話。

「ロスでは24-25年度予算で、消防局予算を日本円で約27億円削減。市長は火災後、『予算削減は火事への対応に影響していない』と反論したが、消防局内から『資金不足で消防車が100台も稼働できない状態にあり、人も確保できていなかった』という暴露発言が飛び出した。火災が一段落したら市のトップの責任問題に発展するのは間違いない」

 ただ、大規模な山火事には地球温暖化の影響も指摘されており、環境保護より経済を優先するトランプ氏にも批判の矛先が向きつつある。大統領就任早々、州知事とディスり合っている場合ではない。

(田村建光)

ライフ