中東ではイスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃が続き、国際社会のイスラエルへの風当たりは強まる一方だ。そのような中、日本は来年に迫った大阪・関西万博にイスラエルが参加することを容認する姿勢を示した。
日本政府は4月、万博に参加するかどうかを決めるのは各国の判断であるが、命の大切さをテーマにした来年の万博の趣旨に照らせば、ウクライナに侵攻したロシアの参加はそぐわない一方、イスラエルによる攻撃は昨年秋のハマスによる奇襲攻撃をきっかけとするものであり、ロシアとイスラエルを同列に扱うべきではないと強調した。
しかし、これまでのイスラエルによる攻撃は完全に自衛の権利を逸脱したものであり、ガザ地区での死亡者数は3万人を超え、国際司法裁判所でさえもジェノサイドを防止するよう警告している。そうした中での日本政府による事実上の万博参加容認は、日本の人権意識の低さを諸外国に露呈するものと言わざるを得ない。イスラエルに対し、攻撃を停止することを条件に参加を認めるなど、何らかの条件をつけるべきだろう。
仮にイスラエルが参加すれば、パレスチナと同じアラブ民族の国々、イスラム教を国教とする国々は日本をどう見るだろうか。昨年秋以降、イスラエルによる攻撃がエスカレートするにつれ、中東や北アフリカ、東南アジアのイスラム教国ではイスラエル製品をボイコットする動きが広がり、店頭からイスラエルからの輸入品が消えた。また、イスラエル擁護の姿勢に撤する米国への不満も広がり、マクドナルドやスターバックスなどへの客足が大幅に減少した。トルコは4月、イスラエルが停戦に応じるまで鉄鋼やジェット燃料など同国向けの輸出制限を開始している。
イスラエルの万博参加は、イスラム教国の日本への不満を増殖することは避けられない。今は何も起こっていないが、外交関係が悪くなるばかりでなく、日本製品を買うな、輸入するなとする声が広がり、現地にある寿司店などへの客足が減り、トヨタや日産など日本車の売り上げにも影響が出ることが考えられよう。
(北島豊)