熊本には企業城下町が誕生…台湾企業が続々日本に進出する「チャイナリスク」背景

 2月24日、熊本県菊陽町に完成した拠点工場の開所式を行った、世界最大シェアを誇る台湾の半導体企業TSMC。新工場は1700人体制で従業員の一部は以前から業務を始めており、工事期間中は多数の作業員が滞在。熊本市の北東に隣接する人口4万3885人(※1月末時点)の町がかつてない好景気に沸いている。

「特にTSMCが進出してから完全にバブル状態。周辺の飲食店はそれほど多くないため、連日多くの工場関係者で賑わっており、特に居酒屋は予約殺到で飛び込みでは入れない店もあるほどです」(地元紙記者)

 もともと同町はもともと農業が盛んで名産の「菊陽にんじん」は甘みが強く、人気ブランドとしても有名だ。一方、熊本中心部まで約15㎞というアクセスの良さもあってベッドタウン化。この20年で人口は1万人増加し、現在も町内には多数のマンションや戸建て住宅が建設中だ。

 そんな菊陽町と隣の合志町にまたがる一帯には、半導体産業に特化した工業団地「セミコンテクノパーク」があり、200社以上の企業が進出。しかも、阿蘇くまもと空港からも近く、国内便だけでなく台北からも定期便が就航している。

「TSMCが誘致に応じたのは日本政府からの1.2兆円の巨額融資が大きいですが、こうした環境の良さも進出を後押ししています」(前出・記者)

 ただし、最大の要因はまったく別にあるという。

「いわゆるチャイナリスクです。中国が台湾に侵攻すれば、工場が攻撃される可能性があり、無事でも占領されたら接収は避けられません。実際、同社が日本以外にも米国にも工場を作り、ドイツにも建設予定なのはリスクヘッジのため。実際、製造業やそれ以外の業種でも国外に拠点を構える台湾企業は増えており、なかでも日本は人気を集めています」(前出・記者)

 例えば、半導体チップの世界的企業PSMCもSBIホールディングスと共同出資という形で宮城県大衡村に大規模工場を建設中。26年からの稼働を目指しており、地元でも期待を集めている。

 近年、地方では工場閉鎖が相次ぎ、雇用の確保が問題になっているが、新たに進出する台湾企業がその救世主となるかもしれない。

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