東証株式市場「勝ち組銘柄はひと握り」令和バブルに手を出すなッ!(3)株価が上がっている時の注意点

 さらにロータス投資研究所代表の中西文行氏によれば、

「植田和男日銀総裁という人も煮え切らない男で、金利をいつ上げるかわからない雰囲気なのですが、米国と欧州が利下げ、日本が利上げというのが金融政策の大局です。

 欧米アナリストの一部は、5〜6月に米国が利下げに踏み切るのではと見ているようですが、4月以降にそういう報道が出始めると、日本でも『日本はいつ利上げに転じるのか』という空気が醸成されてきて、為替が円高に振れ始める。そうなると、円安による為替差益で今期の決算がよかった企業にとっては、業績下降のリスクが生まれてきます。それによって、新規の日本株買いが入りにくくなってくる。

 目先の利く海外のファンドマネジャーなら、日米欧の金融政策の方向性が明確になった段階で、日本株を利益確定売りして売り逃げるでしょう。東証の売買シェアの7割は海外投資家です。彼らが『買い』から『売り』に転じれば、当然ながら株価全体も下落します」

 海外の機関投資家は、1月の新年度開始から2〜3月までは「ニューマネー」と言って買いの時期に充てるという。実際に東証が発表している売買動向を見ても、この時期に彼らが日本株を買い越していることがわかる。そして、第1四半期が終わると4〜5月の運用方針を決めるというのだ。

「前述のように、今年はその時期に日米欧の金融政策に対する見方が鮮明になってくる。日本の為替が一旦円高に振れるのではとなってくると、今まで買っていたものを売って利益を確定するというのが、彼らの基本的な投資行動です。そう考えると、現在の記録的な株高も4月の年度替わりのタイミングで調整場面になると思います」(中西氏)

 つまり、現在の上昇基調が4月以降も続くかは不透明ということ。「平成バブルの再来だ!」などの掛け声に浮かれて安易な気持ちで相場に手を出すと痛い目に遭うのは必至なのだ。

 それを踏まえた上で、すでに株式投資を始めている人が注意すべき点とは何か。フィナンシャル・ウィズダム代表でファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏はこうアドバイスする。

「株価が上がっている時の注意点は、どうしても売りたくなってしまうということです。買った時よりも値上がりしているので売って儲けたいと考えるわけです。

 そういう人は、売った後にも株価が上がり続けているのを見て、『もっと様子を見ておけばよかった』と後悔し、再び『買い』に走りがちです。これで利益を出すのは、普通の個人投資家には難しく、勧められません。『定年後の資産形成のための投資なのだから、慌てて売って儲ける必要はない』と割り切る方が、余計な判断をする必要がなく、長い目で見れば利益にもつながる―ということを頭に入れておくべきだと思います」

 繰り返しになるが、今回の株高は実体経済とは乖離したもので、勝ち組銘柄はハイテク関連など一握り。それとて上昇基調が4月以降にどうなるかも不透明だ。〝濡れ手で粟〟を夢見て踊らされないことが肝心なのだ。

「週刊アサヒ芸能」3月7日号掲載

マネー