給料の増えない庶民にとって「金券ショップ」は、節約のためのアイデアにあふれた場所だ。東京や周辺3県には多くの金券ショップがあるが、特に新宿の大ガード周辺と新橋駅前のニュー新橋ビル1階が二大聖地。多くの店が集まっていて、価格競争もあるばかりか、品ぞろえも充実している。
しかし、近年は窮地に陥っている。特に看板商品だった新幹線の回数券が22年3月で、ほぼ廃止されたことは痛手だったはずだ。閉店する店も増えるだろうと思っていたが、どっこい、新たな商品を見つけて生き残っている。
多くの鉄道きっぷが廃止される中、最近、人気の鉄道きっぷが生まれた。鉄道発祥の地・新橋で多数扱われる商品に春、夏、冬と年3回発売され、旅好きに好評のJR「青春18きっぷ」(5枚つづり)の〝使いかけ券〟がある。
まず断っておくが、青春18きっぷといっても年齢は関係ない。おじさん、おばさん、老人でも使える。期間中の計5日間、全国のJRの普通電車に使えて1万2050円だ。
使用する際は、最初に有人改札で日付入りのスタンプを押してもらう。乗り降りも有人改札に限るが、同じ日であれば何度でも乗り降り自由。つまり、1日分はたった2410円で乗り放題なのだ。
ちなみに、朝早く東京を出て、その日のうちに京都や大阪まで行くこともできる。通常、東京から大阪までの運賃は8910円だから7割引以上お得である。ただし、特急券を買っても新幹線や特急列車などには原則として乗れない。あくまでも普通列車、他に快速などに限定される。変わりゆく車窓からの風景や、それぞれの土地の人たちの乗り降りを楽しみながらの、のんびり旅行も時には楽しい。
この春の発売期間は2月20日から3月末日までで、利用期間は3月1日から4月10日まで。5日分とあるが、複数人で使ってもいい。例えば夫婦で2日間のんびり旅をしてもいい。すると4日分を使用するわけで、1日分が余ることになる。また、1人で使う人も、さすがに5日間は難しく、2日だけ使って3日分が残る人もいるだろう。こうした使用期限が決まっている使いかけの青春18きっぷの売買が金券ショップでとても人気となっている。
夫婦で4日分使ったけど1日分だけ残ったので、その使いかけの券を売る。そして、1日分だけ使いたい人がその券を買うという具合。
使いかけ券の価格は、1日分だけ残っているものがいちばん割高で人気も高い。1日分で利用期限まで1カ月ほど残っている場合は、4000円近くにもなる。しかし時が経つにつれて3500円、3000円、2800円と値段は下がる。2日分残っている場合は、7000円ぐらい、3日分なら1万円ぐらいで始まる。1日分しか必要ない人にとっては、少し割高になるけど、それでも通常料金よりは大幅に安く利用できることも多い。
金券ショップに使いかけの青春18きっぷを持ち込む場合、特にまだ期間が十分に残っているものは高値で買い取ってくれるし歓迎される。だから、夫婦で2日間使ったあとに残り1日分が出たとしたら、すぐに売った方がいい。東京圏の人なら、先述した新橋であれば高値で売れるはず。
また関西の人でも、片道だけ普通列車で行ってみよう、と家族4人で東京まで来たら、新橋や新宿の金券ショップに寄って、残りの1日分を処分すればいい。
金券ショップじゃなくても、Yahoo!オークションやメルカリなどでも盛んに売買されている。3月の初めに利用して、残ったものを春休みが始まる1週間くらい前までに処分してしまうこと。多くの場合、普通に使用する際の1日分2410円よりも高値で処分することができるため、結果的に青春18きっぷをますます割安で利用できることになる。
佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。新刊「つみたてよりも個別株! 新NISA この10銘柄を買いなさい!」(扶桑社)が発売中。