エベレスト“悪臭”の原因は大量の排泄物だった「約3トンが乾燥状態で…」

 やはり、自分のモノはなんであれ、最後まで責任を持つことが、マナーだということだ。近年、エベレストに登った登山家が排泄物をそのまま放置したことにより頂上付近から悪臭が漂い始めたとして、ネパール地域自治区が、排便用封筒の持参を義務化した、と2月8日の英BBCが伝えた。

 通常、排泄物は放置しても自然分解されるものだが、エベレストなど氷点下の高地では、分解されずに有害なガスを発生、そのまま長期間残ってしまうのだという。

「報道によれば、登山家の多くは穴を掘り、そこで用を足すようですが、高度に行けば行くほど、そうした場所がなくなるため、罪悪感を覚えながらも、そのまま放置する場合が多く、ベースキャンプまで排泄物を持ち帰る登山家は少ないというんです。そこで、今回、エベレスト山地の大部分を管轄するネパールのクンブ・パサン・ラム地方自治区が取った苦肉の策が、登山客に排便用封筒の所持を義務付け、ベースキャンプ復帰後、当局が”現物”を確認するという措置だったようです」(通信社記者)

 現地の非政府組織「サガルマタ汚染管理委員会」の推算によると、ベースキャンプと頂上付近の海抜7905メートル地点の「キャンプ4」との間に放置されている人糞は約3トンで、周囲に壁などの覆い隠すものがないため、カピカピに縮んだ状態でコロコロと散在しているという。

「BBCの取材に対し、クンブ・パサン・ラム地方自治区の議長は『われわれの山々から悪臭が漂い始めた。岩に人間の便が見え、一部の登山家が病気にかかったという抗議が入っている』と憤懣やるかたない様子でコメントしています。世界的には、人間の排泄物を堆肥に変換するバイオマストイレが導入されていますが、微生物が分解するには一定の温度を確保しなければなりません。ただ、現在の技術では残念ながら、氷点下の高地で運用するのは難しい。そこが最大の問題点なんです」(前出・通信社記者)

 結局は自分で出した排泄物は自分で持ち帰らせるよう義務付けるしか対策はないのだろうか。

「エベレストの清掃を担う地元の非政府組織『エベレスト地域公害等管理委員会』が2018年に発表したデータによると、ポーター(荷物運搬人)がベースキャンプから廃棄所まで運んだ人間の排泄物の総重量は、年間なんと12.7トン。これは大人のゾウ2頭分に匹敵する重さ。そんな量の排泄物が無造作に置かれていれば、悪臭が漂うのは当然のこと。太陽光発電を活用した新型バイオマストイレの設置などを期待するばかりですね」(前出・通信社記者)

 エベレストの環境改善を願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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