いよいよ、プーチン大統領が次期大統領選に向け、動き始めたようだ。
ロシア日刊紙「コメルサント」は3日、関係者の談話として、プーチン氏が来月に開かれる政府会議で大統領選出馬を発表する可能性があるとの記事を掲載。プーチン氏が再選に成功した場合、2030年まで6年間大統領職を維持することになり、さらに2021年に選挙・国民投票関連法を改正したことで、2036年まで2期の大統領職を遂行できる道を開いた。つまり、今月7日に71歳となるプーチン氏は、単純に計算して84歳まで政権を握ることが現実的に可能なのだ。
「モスクワで11月4日から来年4月12日まで開かれる国家経済業績展示会は、ロシア連邦の経済分野で最も重要な行事の一つですが、ロシアの全国民が注目するこの行事開幕に合わせ、プーチンが来年3月に行われる大統領選出馬を宣言するのではないかと言うのです。クレムリンのペスコフ報道官は報道について『いかなる情報もない』としていますが、同氏は先月、『プーチン大統領はまだ2024年の大統領選への出馬を発表していないが、出馬することになれば彼と競争できる人は誰もいないだろう』と言い切っていますからね。一大ベントの開会式で出馬宣言する可能性はあるでしょう」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
ロシアでは連邦議会が選挙を発表した瞬間から大統領選挙運動がスタートすることになるが、むろん、選挙の争点は経済とウクライナ問題の2点に絞られることは間違いない。
そんな中、ラブロフ外相が先月23日、ニューヨークの国連本部で行われた記者会見で、もしウクライナが中立国に留まれば戦争を終わらせる可能性がある、と示唆する発言を行ったことが国内外に波紋を広げている。
「プーチンが昨年2月24日にウクライナ侵攻を始めて以来、自らの戦争を正当化するために、ロシア系住民をウクライナ軍の攻撃から守るなど、もっともらしい理由を挙げてきましたが、最大の理由はウクライナがNATOに加盟することにより、国境までNATOの勢力が拡大することに対する懸念と反発です。一方、ウクライナは逆にこの戦争でNATO加盟を推進し、その姿勢がNATOにも支持を得てきました。そんな中、プーチンは2014年にクリミア半島に侵攻し、併合。そして、ゼレンスキー大統領は半島を自国の領土として取り戻すと宣言し、今も戦いを続けています。では、その状況下で、なぜラブロフは国連でウクライナがNATOに参加しなければ戦争終結もあり得るとほのめかすような発言をしたのか。その真意については、すでにプーチンはウクライナのNATO加盟を阻止することを勝利と位置付けた——との見方や、クリミアは返還しないが1年前に統合を発表した4つの地域に関しては返還する意思がある——という見方もあります。そして、もっとも有力なのが、次期選挙で国民の支持を集めるためのパフォーマンスではないのか、との説。というのも、本土攻撃によりロシア国民の間からも戦争終結を求める声が上がりはじめ、選挙で圧倒的勝利を収めるためには、やはりウクライナ問題を収めなければならない。そこで、突如として耳当たりのいい言葉を繰りだすようになった、という専門家の声もあります」(同)
だが、土壇場で前言を翻すこともいとわないプーチン氏のこと。大統領選までの一挙手一投足に世界の注目が集まっている。
(灯倫太郎)