佐藤治彦「儲かるマネー駆け込み寺」“俺は無年金”と諦める前に「免除制度」の手続きをしよう

 先日、厚生労働省から無年金で暮らしている高齢者が50万人を突破したと発表があった。高齢者の1.3%が1円の年金ももらっていない。

 年金だけでは老後の生活費が足りないと言われているのに、その年金さえもらっていない生活は、さぞかし大変だと思う。そして、この連載を読んでくれている読者には、そうなってほしくないと心から思う。

 とはいっても「年金をもらうためには、毎月1万6000円以上の国民年金を60歳まで払わなくちゃいけないわけだろ。それも最低10年以上。そんなの俺の給料じゃ無理だ。俺の知っている若いヤツも払ってねえよ」といったツッコミが聞こえてくる。

 会社員の多くは給料から厚生年金の保険料が毎月、天引きで引かれるので、年金は自動的に支払われている。国民年金の第2号被保険者だ。その妻は第3号被保険者といって、条件こそあるものの、自分で年金を払っていなくても老後の年金が出る。

 無年金になるのは第1号被保険者。さっきのツッコミを入れたくなった人のような自営業者や農業、フリーランス、会社勤めでも厚生年金に入ってない人、それから夫が第1号被保険者の妻などもそうだ。

 こうした人たちは、国民年金をみずから納める必要がある。原則は20歳から60歳までの40年間のうち、最低10年以上。納めた期間によって、もらえる年金額は変わってくる。

 ところが、年金を払っていなくても、老後に年金が出る人がいる。役所から送られてくる国民年金の請求書を無視して捨てたりしないで、さっきのツッコミを役所に申し出た人たちだ。

「俺の給料はこのくらいで、毎月1万6000円も払うのは無理なんだよ」とちゃんと役所に届け出れば、役所から「それならしょうがないね。じゃあ、支払いを免除します」とか「支払額の減額を認めましょう」といったケースだ。

「役所がそんな簡単に払わなくていいとか、安くしてくれるもんか。そんな届け出をしたら、嫌な思いをするに決まってるよ」

 そう思う人もいるだろうけど、驚くような事実をご紹介したい。

 日本は多くが会社員なので、今、第1号被保険者として国民年金の保険料を天引きでなく、みずから払わなくちゃいけない対象者は約1430万人。そのうち、まともに払っている人は710万人くらいしかいない。つまり、半分しかいないのだ。610万人は役所に届けて年金の全額免除、一部免除、もしくは、支払い猶予を受けているのだ。

 そして、無視して払わない未納者は105万人程度。その未納者のうちの半分くらいは遅れて払うこともあるので、まったく無視する人はこのうちの一部。この、まったく無視する未納者が、将来年金をもらえない無年金者になっていくのだ。

 もう一度言うけど、毎月1万6000円の年金をきちんと払っている人は半分くらい。残りの多くが無視しないで役所に届けて、支払いの免除などを受けている。だから、払えないのなら無視しないで役所に届けてもらいたい。

 もちろん、毎月きちんと払った人と同じ年金が出るわけではない。もし、20歳から60歳まで全額の免除を受けていたとしたら、将来もらう年金は、40年間すべて納入した人の半分だ。

 そのお金だけで生活ができるなどと言うつもりはまったくないが、そのお金があるのとないのとでは、老後の生活に雲泥の差が出るのは間違いない。

 例えば55歳になって、20歳から24歳まで年金を払わず無視しちゃったけれど、届け出たことにしてくれないか? そんな後付けで頼むと言っても認められないから、届け出は1カ月でも早いに越したことはない。

 今年も間もなく第4コーナー。お互い頑張って生き抜こう。今週も読んでくれてありがとう。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。著書「素人はボロ儲けを狙うのはおやめなさい 安心・安全・確実な投資の教科書」(扶桑社)ほか多数。

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