中国政府は8月10日から日本や韓国、欧米の約80カ国への団体旅行を解禁した。同国の海外旅行はコロナ禍の影響で2020年1月に全面禁止となっていたが、今年1月から段階的に解禁していたものが、大幅に緩和された形だ。
そんな中国の観光客の代名詞とも言えるのが「爆買い」だろう。中国の本格的な海外旅行解禁とあって、10日の東京株式市場は旅行関連銘柄を中心に買いが広がった。
「JALやANA、JR東日本や九州の航空や鉄道会社が軒並み株高となりました。また、百貨店やドラッグストア、ディスカウントストアの小売り業の株も軒並み上がったのは、やはり中国人の爆買いを見込んだのでしょう」(経済ジャーナリスト)
とはいえ、株式市場の見込み通り、あの爆買いが戻ってくるのかと言えば、疑問符がつくようだ。
「9日に中国政府が公表した経済指数を見ると、7月の消費者物価指数が1年前より0.3%下落していて、経済の鈍化が目立ちますね。中国ではコロナ禍からの経済の立ち上がりの遅さが以前から指摘されていますが、例えば、企業が製品を出荷する際の値動きを示す生産者物価指数も、前年比マイナス4.4%で10カ月連続のマイナスです。世界中が物価高のインフレが問題になっている一方、中国はデフレが進行しているわけです」(前出・ジャーナリスト)
加えて不動産景気は停滞、20%以上という若年層の高失業率、日本以上に早い少子高齢化等々、中国経済は日本の「失われた30年」と同じ道に突入し始めているという声も上がっている。彼らの財布のヒモが固くなっていることは容易に想像できるのである。
あの「爆買い」はもはや見られないのかもしれない。
(猫間滋)