東京電力福島第1原発にたまった汚染水を処理したトリチウムを含む「処理水」を薄めて海洋放出する、いわゆるALPS処理水問題。もともと日本は人や環境への影響はない方法であると主張してきたが、国際原子力機関(IAEA)から7月4日に「無視できる程度」とする包括報告書が出されたことで、日本政府は8月の放出で調整に入った。
7日、韓国の方文圭国務調整室長は記者会見し「(IAEAの報告書について)内容を尊重するというのが韓国政府の立場だ」と、海洋放出を容認する姿勢を示した。だが、市民や野党側に目を向けてみると、反対意見がヒートアップ。それが狂騒曲めいているから困ったものだ。
「7月6日には韓国の済州島で、地元の海女や漁民らによる12隻の漁船デモが海上で行われました。これがまた、放射能の警告マークがプリントされた旭日旗を海に広げるという見た目にインパクトがあるものでした。また同日、韓国野党の共に民主党は、夕方5時から党の議員全員が参加するという『海洋投棄非常行動』なる17時間ぶっ続けの抗議活動を行っています。同国にありがちな、相変わらずの反日ナショナリズムが久々に垣間見られました」(外信部記者)
韓国メディアが伝えるところでは、済州島の12隻の漁船は、前方の敵に対して左右の陣形をV字型に開いた「鶴翼の陣」なるものを組んで行われたとか。そこで「鶴翼の陣」を調べてみると、かの諸葛孔明が編み出した8陣のうちの1つで、例えば日本でも、徳川家康が三方ヶ原の戦いで武田信玄軍を迎え撃った陣形として、NHK大河ドラマ「どうする家康」の中でも描かれている。
また、共に民主党の抗議活動に関しては、前日5日に与党・国民の力と市民団体が開いた「福島原発汚染処理水国民大討論会」において、専門家パネルが「韓国漁民が年間放射能にさらされても安全な基準値1ミリシーベルトを超えるには6000億年かかる」と報告されている。与野党の意見も6000億年ほどの隔たりがある始末なのだ。
さらにちぐはぐなのが、最近の韓国国内の日本の受け止め方。
「先月、韓国国内でVISAがおこなった18歳以上の男女1000人を対象にした調査では、人気の海外旅行先1位は日本の26.7%で、2位のオーストラリアの12.9%をダブルスコアで引き離す人気ぶりだと紹介されていました。またこのところの日経平均株価の好調ぶりもあって、株式市場でも現在、韓国のファンドや投資家が米中の株を売って日本買いに走っていることが話題となっています」(同)
時として外国報道は、国民の実相を反映しない極端な動きを中心に取り上げがちだ。受け取る側でもメディアリテラシーが求められる。
(猫間滋)