日経平均「3万1000円超え」の落とし穴!「6月中旬の大変動」に備えろ

 日本の株価の好調が止まらない。日経平均は5月17日にバブル崩壊以来2度目、1年8カ月ぶりに3万円の大台を回復すると、その後も上がり続けて、19日の終値は前日比234円高の3万808円と、3万1000円台が視野に入ってきた。

「要因は様々あります。17日の取引開始直後に発表された1〜3月の四半期のGDPが予想外に好調だったことが直接の要因で、状況的なものではコロナ禍後の国民の活動の戻り、インバウンドの回復や日銀が金融緩和を継承して企業業績が好調なことなどが挙げられます。他にも、多くの大企業が賃上げしたことでの好循環の期待や、ソニー、キヤノン、トヨタ自動車など自社株会の動きが広がっていることなどもあります。ただ、明確な要因は1つだけ。外国人が買っているからです」(経済ジャーナリスト)

 欧米では景気後退が危惧される一方、日本は低金利で安定、円相場もしばらくは130円台で、こちらも安定しており、上記のように好材料が多い。消去法的にも、外国人投資家が日本株を買っているようだ。

「4月にウォーレン・バフェットが日本の5大商社の株を買い増し、商社に留まらずに日本株に関心があることを明かしましたが、このことが端的に外国人投資家の関心のあり方を示していると言えますね」(前出・ジャーナリスト)

 だが、時として日本人の自己評価と外国人の日本のイメージが大きく異なることがある。

「5月9日にアメリカの『TIME』誌が、岸田文雄首相のインタビュー取材をウェブで公開しましたが、そこには『日本を軍事大国にする首相』と記されていたことで、官邸が記述の変更を求めるという一幕がありました。海外からはそう見えるのでしょうが、岸田首相は単に安倍晋三元首相が敷いたレールの上を走っているにすぎないと見ている日本人は多いはずです。確かに外交では、韓国との大幅な歩み寄りという大きな成果があり、広島サミットも無難にこなし、政治的な諸課題に片がついて政治不安が見当たらないのは事実です。しかし、多くの日本人はインフレで実質賃金が低下し、そのうち行われるであろう増税のことも考え、将来への不安が増すばかりなのではないでしょうか」(前出・ジャーナリスト)

 つまり実体経済の構造的な問題は未解決なままで、やはり欧米と比較した場合の消去法で人気が高まっているに過ぎないといえるのだ。

「日経平均は4月の頭から緩やかな右肩上がりになった後、この5月に入り1本調子で上がり続けています。本来の堅調な株価は、下げの調整が入った上で上がるもの。その1点を見ても『過熱感』でしかないと言えます。そこで焦点となるのが、サミットも終わって好材料が出尽くした後の6月10日を過ぎた時期。現在、アメリカ政府が初のデフォルトになるかが大きな経済的不安材料としてありますが、6月13〜14日にはFOMC(連邦公開市場委員会)で金利の据え置きか追加利上げかが話し合われるので、いずれにせよこのタイミングで株価が大きく動くことになるでしょう」(経済部記者)

 3万1000円を抜けて一気に上昇するのか、あるいはあっけなくしぼんでしまうのか、目が離せないのである。

(猫間滋)

ライフ