災害関連死が7万6000人と規定とされる南海トラフ地震だが、16年4月14日に発生した熊本地震こそ、災害関連死の多さが際立っていた。犠牲者273人のうち、なんと218人が災害関連死。うち60人に共通していたのは「車中泊」だった。岡部氏は「車中泊はNG」として、次のように分析する。
「車中泊の方は、トイレに行かなくて済むように飲食を控えていたという話を聞きました。それが一因で脱水症状や持病悪化、エコノミークラス症候群に繋がったのではないでしょうか」
避難所のトイレは「想像を絶する汚れ」だそうで、誰もが控えたい気持ちになるのもわからなくはない。
「避難所で生き残るためには、排泄を欠かさない環境にしなければなりません。その環境は誰が作るのか、自治体がやってくれるのか? いいえ、原則は住民たちの自主運営です。そのため、食事の配膳や各所の掃除は、協力しながらやっていくことになります。気持ちよく排泄できるトイレを保つことは、自分の命を守ることに直結するのです」(岡部氏)
なにかと面倒だからと希薄になりがちな現代のご近所づきあいだが、命のかかった避難所ではそんなことは言っていられないのだ。
一方、自宅での避難生活となった際はどうなのか。岡部氏はまず、集合住宅での注意点を挙げる。
「震度5以上になると配管が壊れ、下階に水漏れする可能性が高くなります。上階の住民はトイレやキッチンなど、水道を使うことはNGだと思っておきましょう。『水は最後の最後まで必要なライフライン』と言いますが、飲料水以外は水を使わなくても生活できます。手はウェットティッシュを用意すればいいし、入浴の代わりに大人用の大判ウェットタオルで体をふけるよう、備えておきましょう」
最も気になるのは水が不使用となった場合のトイレだが、「防臭効果がきちんとしている『非常用トイレ』を備えておきましょう。せっかく避難所よりもストレスが少ないのですから、その環境をキープしたいですからね」(岡部氏)
そして食事については、カセットコンロで料理の選択肢は無限大になるという。
「食料をあらかじめ備蓄しておくのはもちろん、冷蔵庫だって立派な備蓄庫なんです。停電しても夏は3日、冬なら1週間はもちますから」(岡部氏)
防災意識が高まっている今こそ、備えるべし!
*週刊アサヒ芸能3月23日号掲載