過去100〜150年間隔で繰り返し発生してきた南海トラフ大地震。前回の発生は1944年及び1946年で、発生から70年以上が経過した現在、20年以内の発生確率は60%とされ、その切迫度は年々高まるばかり。「必ず発生する」と言っても過言ではない大地震に備え、生き残るためにやるべきこととは!?
日本全体に甚大な被害をもたらす南海トラフ大地震。「中央防災会議」によると、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7、四国や近畿、東海地方で最大震度6強、東京では震度5強、その他関東から九州という広範囲にかけて震度5弱以上の揺れが想定されている。こうしたことからも、被害は東日本大震災以上と言われているのだ。
「駿河湾から徳島県沖にかけては、10〜20メートルの大津波も想定され、死者数は32万人以上に上るとされています。行方不明者2523人、死者数1万5900人だった東日本大震災の約20倍です」(社会部記者)
さらに見逃せないのは、避難生活などで亡くなる「震災関連死」の多さだ。
「東日本大震災では3789人に上りましたが、南海トラフではその20倍の7万6000人に上る災害関連死が想定されています」(社会部記者)
避難生活の過酷さが表れた数字だが、生き抜くためにはどうすればいいのか。防災アドバイザーの岡部梨恵子氏は「勘違いしている人がたくさんいますが、行けば誰でも避難所に入れるわけではない」と前置きして、こう続ける。
「例えば東京都なら人口1400万人のうち、避難所に入れるのは320万人ほど。入れる条件として、自宅倒壊や火災による焼失などが挙げられます」
そのように自宅に住めずどうしても避難所に行かなければならなくなった場合、まずは避難所への持ち物を確認したい。
「地震発生時は命を守る行動を迅速に取れるかが肝。ゆえに身軽さが大切で、最低でもペットボトルの水1本、半日〜1日分の生活用品で十分です。非常用持ち出し袋を備えるなら、重さは女性と高齢者は6キロ、男性は10キロを目安にしましょう」(岡部氏)
中身は水、非常食、衛生用品、情報収集できる機器が基本となるが、中でも重要なグッズがある。
「エアーベッドなどのきちんと睡眠を取ることができる寝具と、避難所経験者の方に話を聞くと、皆さん声をそろえて『アイマスクと耳栓は絶対にあったほうがいい』と。ただでさえ非日常で興奮状態にあり、眠りにつきにくい中、夜はトイレに行く人のために完全に消灯していません。さらに周囲にはずっと泣いている人、こそこそ話す人、イビキや咳払いなど、あらゆる音が混在し、ストレスフルな環境です。昼間もそしゃく音や痰の絡んだ音など他人が出す音に悩まされて心身とも疲労が重なってしまう。最初のうちにきちんと睡眠が取れるか否かが、その後の健康状態に大きく影響を与えるのです」(岡部氏)
睡眠は人間の健康に欠かせない三大欲求の一つだが、では、食事についてはどうか。
「これも避難所経験者に聞きましたが『配給に甘い菓子パンが多くてつらかった』という声が多かった。おにぎりなども届きますが炭水化物が主で便秘などを引き起こしがち。それを踏まえて、複数の栄養素が手軽に取れるバランス栄養食を入れておくのもオススメですね」(岡部氏)
倒壊具合によっては、自宅に食料を取りに行ける場合もある。事前に自分が食べたい食料を備蓄庫などに備えておくことも大切だ。
(つづく)