衝撃的だった米軍戦闘機による中国製「偵察気球」の撃墜事件。現在も残骸調査が続いているが、この問題についてバイデン大統領は、「撃墜についていっさい謝罪はしない」としながらも、「習主席と話をするつもりだ。真相究明を望んでいる」として、この問題をめぐり習近平国家主席と電話会談する考えを示した。
そんな中、昨年11月のイギリスに続き、今度はオーストラリア政府が、200以上の政府機関の建物に設置された900台を超える「中国製防犯カメラ」を一斉撤去するという方針を発表した。ITジャーナリストが解説する。
「これは、中国による『バックドア』、つまり『裏口』からの『のぞき見システム』に対する対抗策です。バックドアとは、例えば、設置した防犯カメラから、ネットを通してそれを製造した側が、いつでも自由に、その映像情報を吸い上げられるというアクセス手段の1つ。もともとはアメリカがこの手口を疑われた過去があり、ロシアに亡命した元CIA職員のエドワード・スノーデン氏によってその諜報活動が暴露されました。中国がこれらのシステムのおいしいところを取って同様のシステムを構築。そして他国製品の半額以下、という価格で大量に売り、結果としてバックドア機能を搭載した中国製カメラが、欧州の自治体や空港、高速道路などの公共機関に設置されるようになったというのです」
バックドアによるカメラ映像の流出は、個人情報の漏洩のみならず、企業や国家機密の漏洩へと繋がる危険性をはらんでいる。
「すでに2015年には、韓国に輸入された200台の中国製家庭用防犯カメラに、メーカーによって仕込まれたと推定されるバックドアが発見され、衝撃が走りました。ところが、現在の防犯カメラの主流機種はネットワークと接続されたIPカメラなので、素人が発見することはほぼ不可能。これが、中国にあるクラウドサーバーに繋がり、しかも、通常ルートではない『裏口』からの侵入のため、ワクチンプログラムでも濾過できない。つまり、今でも『バックドア機能付きカメラ』が、野放しになっているということです」(前出・ITジャーナリスト)
そんな背景もあり、オーストラリア政府が中国製カメラの一斉撤去に踏み切ったわけだが、一方、日本はどうかと言えば、
「特定の国や企業の製品を排除する取り組みは行っていない」(松野博一官房長官)
上述のようにバックドア問題は国家機密の漏洩という危険性を抱えているだけに、日本が後手に回るような事態だけは、なんとしても避けて欲しいものだ。
(灯倫太郎)