入門マニュアル「シニア再就職のリアル」〈フードデリバリー配達員〉(2)稼げる港区の駐輪場まで電車通勤

 高い〝時給〟には秘密があった。真鍋さんは東京の杉並区在住だが、およそ20キロ離れた港区を主な配達エリアにしている。

「実は現場まで〝電車通勤〟をしているんです。駐輪場にウーバー用の自転車を停めていて、毎日だいたい11時に〝出勤〟して、休憩をはさんで22時頃に電車で帰る生活ですね。というのも自分が住む杉並区を1としたら、港区エリアは報酬が1.3倍になるんです。ちなみに新宿区は1.2倍。3割増は大きいですよ。それに、港区はウーバーの配達員が不足しているそうです。だって、港区に住むようなお金持ちが、わざわざアルバイトをするはずがないでしょう? 週5日稼働すれば、電車の定期代も駐輪場代も十分にペイできますよ。片道1時間の通勤時間も苦になりません」

 そんな真鍋さんがウーバー配達員になったのはコロナ禍真っただ中の20年。それまでは、店舗販売の仕事に就いていたが、コロナ不況や上司とのトラブルが原因で退職。以降は配達員の仕事で生活している。

「一番いいのは人間関係に悩まなくてもいいこと。サラリーマン時代はストレスも多かった。毎日、自転車に乗っているせいか、下半身の勃ちもよくなった気がします(笑)。そうそう、実は港区近辺には釣りスポットがたくさんあって、配達の合間に釣り糸を垂らすことも。クロダイが釣れる穴場もあるんですよ」

 仕事の合間に釣り三昧でストレスフリー。理想的な仕事に見えるが、一時はウーバー配達員のライバルが増えたことで収入が激減。掛け持ちをした経験も。

「一時期、出前館に挑戦したことがあります。1回あたりの報酬は出前館のほうがよかったですね。ただ、自分がやっていた頃は、『この時間までに届けて』というノルマが厳しかった。システム上の問題かもしれませんが、飲食店と配達先が5キロ以上離れているのに、『20分以内で届けて』とか‥‥。その頃は1日の報酬が2万円に達することもありましたが、今はウーバー1本でやっています」

 しかし、どんな仕事でもトラブルは付きものだ。

「ありがちなのは麺類やスープ系のフードが、バッグ内でこぼれてしまうこと。お店の人がフタをしっかり固定していなかったり、転倒したりして、バッグの中がビチャビチャになってしまうんです。過去には有名店のつけ麺を運んで、配達先の目の前でバッグを開けると、バッグの中が濃厚スープでビチョビチョ状態だったことも。そういう時は、ウーバー本部にチャットで報告すると、お客さんに対しては『キャンセル扱い』に。配達料もしっかり加算されていたのですが、バッグの中を洗うのが大変でした。食べ物を運ぶバッグは清潔第一ですから」

 バッグの中を見せてもらうと、内部には小さな仕切りが作られ、お椀型容器がしっかり固定できるよう改造されていた。苦い経験を生かすくふうはどんな仕事にも必要かもしれない。

*入門マニュアル「シニア再就職のリアル」(3)に続く

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