主要新聞社のアンケートでは、反対派が賛成派を上回っている安倍元総理の国葬。すでに9月27日に日本武道館で開催されることが政府から発表されているが、海外ではこうした国葬の是非を問う議論が起きることはほとんどない。しかも、王族や国家元首経験者ではない、各分野で多大な功績を残した人物が国葬となるケースが珍しくない。
例えば、20年11月に死去したアルゼンチンが生んだサッカー界のスーパースター、ディエゴ・マラドーナも大統領が「3日間の喪に服す」と宣言。棺が安置された大統領府には100万人を超える国民が殺到し、弔問が途中で打ち切られる事態になった。
また、お隣ブラジルでは3度のF1王者に輝き、日本にも大勢のファンがいた“音速の貴公子”アイルトン・セナ(94年没)も国葬。墓地へ向かう沿道は、マラドーナ氏の葬儀を上回る300万人の人々で埋め尽くされた。
さらに“レゲエの神様”で知られるジャマイカのボブ・マーリー(81年没)、台湾では日本でも多数のヒット曲を残したテレサ・テン(95年没)の国葬が営まれ、当時世界中で大きく報じられている。他にもノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサ(97年没)、日本でも一時期注目を集めた宗教家サイババ(11年没)もインド政府が葬儀をとり行っている。
「国によっては国葬の条件などを定めた法律もありますが、それでも日本に比べると寛容です。実際、逮捕歴のあるマラドーナやボブ・マーリーの国葬が営まれるなんてことは、日本ではまず考えられません」(全国紙部記者)
ちなみに日本にも戦前までは国葬令という法律が存在した。同法律によると、首相経験者で国葬となるのは「複数の組閣経験」と最高位の勲章「大勲位菊花章頸飾」の受賞歴。なお、安倍元総理は両方の条件を満たしている。
もし国葬令が失効していなければ、ここまで批判されることはなかったのかもしれない。