安倍元首相「核共有」発言に被爆地・広島から猛批判「ウクライナに便乗するな」

 安倍晋三元首相が2月27日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」に生出演。ウクライナ問題に触れ、日米共同で運用する「核共有」政策の導入について「議論すべき」と発言したことで、関係各所から怒涛の如く猛反発の声が上がってる。

 安倍氏は25日、ツイッターを更新。〈ロシアによるウクライナ侵攻は、戦後私たちが作ってきた国際秩序に対する深刻な挑戦であり、断じて許すわけにはいきません〉とつぶやいたが、番組ではこのツイートに対し1700件を超えるコメントが寄せられたとして、その中に〈プーチンを説得してください!〉という要望が含まれていたと紹介。すると、安倍氏は、「もちろん説明出来たら私も説得したいんですが」と前置きして「まず今、G7の首脳たちも結束を固め、そのうえでプーチンに対する説得を行っている。あるいは外交的な要求、要請、交渉を行っていくんだろうと思います」と語っている。

「安倍氏は首相時代にロシアを11回訪問。プーチン大統領とは27回も会談し、『ウラジミール』『シンゾー』と呼び合う仲だとアピールしてきたこともあり、どんな発言が飛び出すかと期待していましたが、結局は他人事発言に終始するだけ。さらに『なぜ、プーチンがウクライナに侵攻したのか?』と問われると、あたかもウクライナが核を放棄したためであるかのように語り、『日本はもちろんNPT(核拡散防止条約)の加盟国で、非核三原則ではありますが、世界はどのように安全が守られているかという現実について、議論していくことをタブー視してはならない』と、つい本音が出てしまった。元首相でキングメーカーの異名をとる安倍氏の発言だっただけに、永田町に激震が走りました」(政治ジャーナリスト)

 案の定ネット上は炎上し、被爆地である広島からも批判が噴出。これに慌てた岸田首相は、28日の参院予算委員会で即、「非核三原を堅持する我が国の立場からして、(核共有政策は)認められない」と、安倍発言を全面否定。それでも批判の声は収まらず、翌3月1日には岸信夫防衛相も「安倍氏の発言に政府としてのコメントは差し控えるが、政府としては非核三原則を堅持していくとの考えに変わりはない」と、火消しに奔走する騒ぎに。
 
 前出のジャーナリストがあきれたように語る。

「2016年12月に安倍氏の地元・山口県でおこなわれた日露首脳会談では、二人で温泉に浸かり親密さをアピールし、『プーチン訪日で北方領土返還』と目論んだのですが、当のプーチン大統領は2時間40分も遅刻。仲良し演出は見事失敗に終わりました。その後も『外交の安倍』をアピールするため、何度か首脳会談をセッティングしたものの、日本は共同経済活動に3000億円のカネを出すよう約束させられただけで、ロシア側ははなから“主権は我々にあり”の姿勢を崩さず、何の合意もえられない状態が延々続くだけでした。つまり、安倍氏は最後の最後まで、プーチンに舐められていたというわけです」

 その隙に、ロシアは北方領土返還どころか、北方領土の軍備拡張を進め、新型地対艦ミサイルや軍隊の配備のほか、クリール諸島(北方領土と千島列島)で軍人200人、車両20台が参加した軍事演習をおこなうなど、着々と軍事要塞化されている。そんな安倍氏が、今回のウクライナ問題に便乗するかたちで「核共有」の話を持ち出したのだから、批判が集まったのは当然だろう。

「モノ言えば唇寒し」の今回の安倍発言、振り回される岸田首相の心中は…。

(灯倫太郎)

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