安倍晋三元首相の銃撃事件後、テレビではCMの自粛が相次ぎ、ACジャパンの公共CMに差し替えられるケースが増えた。CM総研によると同CMの放映数は一時的に平時の50倍超にまで増加し、東日本大震災以降で最多になったという。
「ACジャパンは、CMを通じてより良い社会になるようなメッセージを訴えかけていくことを基本理念とした公益社団法人で、公共マナーや環境対策など社会問題をテーマとしたCMを多く制作しています。CMは会員となっている放送局や新聞社に提供され、自由に使用することが可能。天皇陛下の崩御や東日本大震災といった大規模災害などに際し、明るいCMや嗜好品、娯楽系のCMなど企業が放映するのにそぐわないと判断して自粛した場合に、ACジャパンの公共CMに差し替えられます」(フリージャーナリスト)
CM総研によると、今回の銃撃事件の前日には放映9回だった公共CMが、事件当日の7月8日には241回に急増。11日は509回と、さらに倍増したという。なお、事件を巡っては宗教団体との関連が報じられていることから、CMを自粛した企業にも「自粛した意図を示すべき」と話す専門家もいるが、ネット上では《宗教団体の名前を出そうとするメディアへの圧力という穿った見方もあるけど、事件直後に団体名は出ていなかったはず》《事件後は緊急特番ラッシュになっていたから、さすがにそこにCMを出すのをためらった企業が増えただけでは?》といった指摘も見られる。
「公共CMが急増した理由は、やはり緊急特番ラッシュの影響が大きかったようです。事件発生直後からNHKも民放各局もこぞって通常の番組を休止して特番に切り替え、銃撃のシーンが繰り返し放送されていましたからね。視聴者の精神的な面も考慮し、通常のバラエティ番組などで流す予定だったポップなCMが自粛せざるを得なくなったということです。ただ、ACジャパンのCMは天災や非常時に流れるイメージが強くなっているだけに、あまりに増えすぎるとむしろ観る側の精神的な負担が大きくなる可能性も孕んでいます」(同)
やみくもに流し続けるのも問題ということか。
(小林洋三)