美しいノックって、何だ? 2月15日、沖縄セルラー・スタジアムでビッグボス新庄剛志監督(50)率いる北海道日本ハムファイターズと原巨人の練習試合が行われた。
しかし、同試合は「新庄監督が何を仕掛けてくるか」ではなく、試合前のノックにも注目が集まっていた。
「新庄監督が2月5日の練習で『理想のノックには程遠い。美しいシートノックを見せたい』と発言したからです。日ハムのノッカーを務めた稲田直人コーチは緊張したのか、打ち損じが出てしまい…。途中からノックの位置をホームベース前に変えていました」(現地記者)
「美しいノック」に興味があったのだろう。この日、日本ハムのシートノックが始まるのと同時に、元木大介ヘッドコーチが顔を出し、村田修一、亀井善行両コーチとともに体を乗り出してそれを見つめていた。
「元木コーチが村田コーチに顔を寄せ、何かを話していました。マスクをしていたので、内容までは分かりませんでしたが」(同)
その後、巨人が日本ハムナインと入れ代わって守備位置に散った。
ノックバットを握ったのは、阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチだった。
「外野ノックからスタートし、外野手には緩いゴロをほぼ正面に打っていました。内野手に関しては色々と打ち分けていた感じです。サードの勝俣翔貴にはいきなり三遊間の強い打球を放ち、ドロだらけにさせたかと思えば、二塁手は左右に振ったり、自在に操っていました」(プロ野球解説者)
指導者1年目の稲田コーチとの「差」を見せつけたようだ。しかも、そんな阿部コーチのノックを後方で盛り上げていたのが、一軍昇格したばかりの3年目・山瀬慎之助捕手だ。打球が放たれる絶妙なタイミングで声を張り上げ、野手陣を活気づけていた。
日本ハムナインも終始声を張り上げ元気ハツラツだったが、盛り上がりという点では巨人に軍配が上がったようだ。
「目的が異なればノックの打ち方も違ってきます。選手を鍛えるのなら左右に大きく動かしますし、しっかりとした送球重視の練習なら、選手のほぼ正面に打って、前進させてやります」
コーチ経験を持つ前出のプロ野球解説者がそう言う。
見た限り“美しいノック”を見せていたのは、巨人のほうだった。試合前、新庄監督はグラウンドに姿を現さなかったが、日ハムナインと巨人の守備力の差はどこかで見ていたはずだ。また、日本ハムナインもシートノックのクオリティで「負けた」と思ったのではないか。
「守備練習を比べて悔しいと思っているのなら、日本ハムナインは間違いなく成長しています」(同)
試合だけではなく、練習でも注目を集める。これも、新庄革命の一環だろう。「お金を払ってでも見たい」とファンに思わせる守備陣営が完成するも間近か。
(スポーツライター・飯山満)