忖度!?「イギリス株」「インド株」と言うのに「中国株」と言わないのはなぜ?

「そういえば、最初は自国メディアでも『武漢肺炎』と連発していたんですけどね。都合が悪くなると圧力と金の力で相手を黙らせ、ついには物事がなかったことにしてしまう。そんな国の顔色を気にして日本のメディアが『呼称』を忖度しているとしたら、本当に情けない話ですよ」

 そう語るのは、発生から1年以上、新型コロナ関連の取材を続けてきた月刊誌記者だ。

 最近、新型コロナウイルスに関連する報道でよく耳にするのが「従来株」という表現。イギリス株やブラジル株、さらにはインド株などが、国名で明記される一方、中国武漢市から広がったとされる「中国株」を「従来株」と呼ぶことに疑問を感じる人も少なくないだろう。

 と、そんななか、ジャーナリストの門田隆将氏が15日、ツイッターを更新。変異前のウイルスに関しては「従来株」と表現したテレビ番組の写真を引用した上で「ここまで来ると滑稽という他なし。イギリス株、南アフリカ株、ブラジル株、インド株……。どこの国・地域のウイルスも名称をつけているのに中国株だけは怖くてつけられず〝従来株〟と。〝中国ウイルス〟と言い続けたトランプ政権は改めて凄いと思う。そこまで怖いなら、日本はさっさと中国の属国になりなさい」と、日本政府を皮肉るツィートをして、SNS上を激しくザワつかせた。

 前出の記者が続ける。

「もともとウイルスの俗称は、そのウイルスが最初に発見された地名にちなんで付けられていて、たとえば、米オハイオ州ノーウォークで最初に確認されたからノロウイルス、コンゴ民主共和国のエボラ川上流で検出されたからエボラ出血熱、さらにマールブルクウイルスもドイツのマールブルクで最初に発見されたため、そう命名されました。ところが、2015年にWHOが、《新たに発見された病気名に地域名を用いない》というガイドラインを定めたことで、中国はここぞとばかりに『武漢ウィルス』という呼称を使うことに猛反発。結果、日本でも、左派・リベラル派を中心に『武漢ウィルス』という表記は『差別的だ』とする意見が噴出。で、苦肉の策として生まれたのが『従来株』という表記だったわけです。ただ、台湾をはじめ多くの国では堂々と『武漢肺炎』『武漢ウィルス』と表記していますからね。日本がなぜ中国にそこまで忖度しなければならないのかは、疑問としか言いようがありません」

 加えて、中国が「武漢ウィルス」という表現を使わせたくない理由のひとつには「乱発されている訴訟や損害賠償請求をこれ以上エスカレートさせたくない、という狙いがある」というのが、前出の記者だ。

「新型コロナウイルスの感染拡大で甚大な損害を受けたとして、昨年から中国に損害賠償を求める動きが世界各地で広がっています。米中西部ミズーリ州は昨年4月下旬、中国政府や共産党などを相手に損害賠償を求める訴訟を米国で起こしていますし、インドでも弁護士団体などが20兆ドルの賠償を求める請願書を国連人権理事会に提出。ナイジェリアでは弁護士らが、中国政府に対し2千億ドルの賠償を求める考えを表明しています。むろん中国は『自国の対策の不十分さを責任転嫁している』と強く反発していますが、さすがにこの状況を放置しておくわけにはいかない。で、反発ムードを沈静化させるためにも、『武漢ウィルス』という表記を使わせたくない。それが、中国の本音だと考えられますね」

 ただ、今回のコロナウィルス騒動で、中国の一地方都市が全世界にその名を轟かせことは事実。いかに、表記を制限したところで、その事実は消しようがないことだけは間違いない。

(灯倫太郎)

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