昨年には生え抜きの山本泰寛内野手(27)を金銭トレードで阪神に放出し、この3月にも田口麗斗投手(25)の交換トレードを成立させた原巨人にって、小林誠司捕手(31)は「最後のカード」ともいえそうだ。
3月10日、福岡ソフトバンクとのオープン戦でスタメンマスクをかぶったのは小林。打撃好調の大城、経験豊富な炭谷、成長著しい岸田との激しい正捕手争いが続いているが、これまで「次のトレード放出要員は小林か」という噂が絶えなかった。
「原巨人は2ケタ勝利の経験のある田口まで放出しました。飼い殺しはしない、働き場所を与えるという原辰徳監督の考えなら…」と予想する声もあるが、「放出はない」と言い切る関係者もいた。
「正捕手を探しているチームはあります。捕手難とされる楽天や日本ハムが、もし小林を獲れるのなら欲しいところでしょう。守備面での実力を考えれば引く手あまた。でも、巨人側が『小林を出してでも欲しい』と思う交換要員がいるのかどうか。若手の有望株を狙うとしても、ポジションが既存戦力と重複しそうですから」(ベテラン記者)
しかし、今回の田口の放出でわかったこともある。小林と田口は“ドラフト同期生”だ。2013年のドラフト指名選手だが、1位・小林誠司、2位・和田恋、3位・田口麗斗、4位・奥村展征、5位・平良拳太郎。今現在、巨人のユニフォームを着ているのは小林だけ。奥村、平良はフリーエージェント補強の人的補償で他チームに移籍したが、もし、「小林放出」となれば、13年に支配下で指名した選手は一人もいなくなる。
「他球団が欲しいと思う選手、他球団で頑張っている選手ばかりということは、その年の巨人のスカウトティングがもっと評価されても良いと思います」(球界関係者)
一例を挙げれば、平良は「沖縄の国頭郡に良い投手がいる」とスカウトの間では有名になっていたが、3年生最後の夏、沖縄県大会では初戦で消えている。その試合を視察したのは巨人スカウトだけだったという。
「他の好選手がいる別の高校の試合が重なり、他球団スカウトは『平良は勝ち上がる』と見込んでいました。試合を実際に見た巨人だけが『育成枠ではなく、支配下』と評価を上方修正しています」(前出・球界関係者)
もっとも、近年の巨人ドラフトは上位指名選手の故障も多く、そのツケが今日のフリーエージェント補強やトレードにつながっているとも解釈されている。小林が本当に移籍してしまったら、「13年指名選手は全員、他球団で活躍」という異常事態に。小林の正捕手返り咲きを願う声が巨人のスカウト陣からも聞こえてきそうだ。
(スポーツライター・飯山満)