ただでさえコロナ禍で経済的に苦しい中、生活に身近なものが、“予定”を含めて相次いで値上がりするようだ。
小売価格が滅多に上がらないことで「物価の優等生」と呼ばれる卵。これが目下、値上がり中なのだ。
「年初の1月5日の取引価格は1キロ120円だったものが、20日には145円と、一気に2割も値上がりしています。大きな理由の1つは鳥インフルエンザの流行で大量の鶏が殺処分されたこと。その他の理由として、巣ごもりで内食が増え、スーパーの小売り需要が高まったことなどが考えられます」(経済ジャーナリスト)
鳥インフルでは、20年11月から今年1月にかけて全国で400万羽以上の鶏が殺処分されている。また相場の動向を見れば、全国3位の鶏卵生産地である千葉県が大きなカギを握っているようだ。というのも、19年に千葉県を大型台風が襲った際には高値になり、その後いったんは落ち着いて、1回目の緊急事態宣言が出されると下落に転じていた。それが、昨年12月に千葉県で鳥インフルが発生するとまた高値に転じたからだ。
コロナ禍で飲食店の需要が落ちたかと思えば、今度は内食で小売りの需要が高まったり、はては鳥インフルまで重なってと、厄介なことこの上ない状況はしばらく続きそうだ。
庶民の食卓を支えてきた魚といえば、このところ記録的な不漁が伝えられているさんま。ついにはさんまの缶詰が値上がりするという。
「つい先日、マルハニチロがさんまの缶詰を4月1日から値上げすると発表しました。対象となるのは蒲焼や塩焼などの4品目。これまで230円だったものを260円にするとしました」(前出・ジャーナリスト)
もちろん家計にとって打撃なのは言うまでもないが、漁業関係者にとってはもっと深刻だ。新年のマグロの初競りの値段が果たして億を超えるかどうかが毎年注目を集めていたが、伝えられた通り今年はわずか2081万円と極めて低調だった。これをコロナ禍の外食産業低迷の象徴と見るむきもあり、漁業関係者のため息ばかりが聞こえるようだ。
現段階で家計には無関係ながら当事者の間から悲鳴が聞こえているのが電気代だ。電力の卸値が異常な高騰を示しているのだ。
「昨年12月半ばから電力市場が値上がりし、今年に入ると異常な高値になっています。毎年、当然のことながら夏と冬は高くなるものですが、それでも昨冬の最高値は1キロワット時当たり10円程度だったものが、1月12日にはおよそ145円と、とんでもない高値になっているんです」(経済誌記者)
理由の1つはもちろん厳冬が続いたからだが、どうも明確な理由はわかっていないようだ。LNG(液化天然ガス)の調達難によって、それを燃料とする火力発電所の電力供給体制が不安視されているのが大きな理由ではないかと囁かれているのだが、それだけでこれだけ値上がりするとは考えにくい。ただここでも、「コロナで発電所の生産力が落ちている」、「コロナでLNGを運ぶタンカーの運航が遅れている」といった指摘もなされており、ここでもコロナが禍々しく顔を出す。
そこで経産省は1月15日にインバランス等料単価について200円を上限とする措置の導入を発表したが、発電力を持たずに市場から卸販売する新電力56社が20日になって情報公開などを求める要望書を経産省に提出した。卸値の高騰が家計を直撃する日は訪れるのか。
(猫間滋)