卵の卸売価格が5カ月ぶりに下落、それでも3年前の倍だった

 7月3日に発表された卵Mサイズの卸売価格は5円下がり、2週連続で値下がりしていることが分かった。今後も卵の卸売価格は下がっていく可能性が高いとみられているが、10個入り1パック100円台前半で購入できた頃の値段まで戻ることは難しいとの指摘もある。

 JA全農たまごの発表によれば、東京での1キロあたりの卵Mサイズの卸売価格は340円。今年4月から卸売価格は350円のまま高止まりを続けていたが、これで6月の平均卸価格は349円となり、5ヶ月ぶりに下落に転じている。下落の要因について農林水産省は、例年卵価格は夏場に値下がりする傾向にあることと鳥インフルエンザの清浄化宣言がおこなわれたことが影響している可能性が高いと説明している。

 卵といえば物価の優等生と言われてきたが、世界的な鳥インフルエンザの大流行によって、前年に比べ卸売価格は6割以上も値上がりし、過去最高を記録している。ただ、鳥インフルエンザで被害を受けた養鶏場も徐々に生産を再開しはじめていて、卵価格は今後もさらに下落していくとみられている。

「ただ、鳥インフルエンザ感染拡大以前の価格に完全に戻ることはないかもしれません。現在、ニワトリのエサとなるトウモロコシや大豆などは大部分を輸入に頼っているのですが、世界的な穀物需要の増加や輸送費の高騰などによって、この数年で倍近くにまで値上がりしているため、以前と同じ価格で提供するには難しい状況にあるのです。さらに、もともと卵は物価の優等生というイメージから値上げしづらいという側面があり、生産者は赤字を出し続けているところもあった。未曾有の物価高が続く中で、以前と同じ値段を求めることは生産者をさらに苦しめることにもなりかねません」(経済ジャーナリスト)

 昨年の卸売価格は年平均で215円。2020年は171円だった。3年前のおよそ倍の金額でも「下がった」と喜べるとは、時の流れを感じずにはいられない。

(小林洋三)

マネー