ついに東京でコロナの新規感染者が500人に達して第3波がいよいよ本格化している。さらなる感染拡大の危機感が広まる中で行われた12月1日の菅総理・小池都知事のトップ会談。東京都におけるGoToトラベルの扱いは、65歳以上と基礎疾患のある人の「自粛」という、何とも玉虫色の妥協の産物だった。
「もともと横浜の市会議員からの叩き上げの菅さんと、キャッチなコピーを駆使する目立ちたがりの小池さんとでは政治家として違った方向を向いていてソリが合わないことで有名。GoToトラベル開始時に東京都を対象外とするかどうかでも、菅さんが『東京問題』と言えば小池さんは『冷房と暖房を両方かけるようなもの』と応酬し合った末に、結局は東京を除外したことで対立は頂点に達していました。だからどんな結論になるのかと注目が集まっていましたが、とんだ拍子抜けでした」(全国紙記者)
一応のトップ会談を経ることで、国が「東京都の判断」と言えば都は「GoToトラベルは国の事業」と、決定権を委ねることで責任逃れができる。大方そんなところなのだろう。
今回はそんな、お互い素知らぬ顔で落としどころを探り合ったGoToトラベル取り扱い問題だが、別の問題でも両者は腹に一物を持って探り合っている。あまり世間では取り上げられることがないが、スガノミクスの1つである「国際金融特区構想」がそれだ。
「菅政権では国土強靭化、携帯電話値下げ、地銀再編などの政策を打ち出していますが、これらは既存戦略であって成長戦略というには物足りない。そこでスガノミクスで新味があるものと言えばこの国際金融特区構想がそれに当たります」(経済ジャーナリスト)
だがこれは実は小池都知事が早くから打ち出していたものだ。小池氏が最初に都知事になった16年の選挙公約で既に掲げられていたからだ。
「今回の金融特区構想は、中国が香港での1国2制度を反故にした頃で、香港の東アジアの金融センターとしての役割が失われることの受け皿になろうというもので、つい最近持ち上がった話です。国際的な話ですから、都が先駆けていたにしても国の後押しがないとなかなか先に進まない。そこへきてこれですから、自分が最初に打ち出したものを横からかっさらわれたようなもので、小池さんとしてはそりゃ当然面白いはずがないでしょうね」(前出・経済ジャーナリスト)
しかも菅総理は特区の候補地について、「東京にはこだわらない」とメディアに明言。むしろ、もともと松井一郎・大阪市長とは個人的にも蜜月関係にあって誘致に積極的な大阪や、総裁選で真っ先に菅陣営について借りのある麻生太郎・副総理の地元の福岡を優先させる方針のようで“東京除外”の方針が透けて見える。
コロナそっちのけの暗闘に呆れるほかない。
(猫間滋)