「引退試合が巨人戦となったのはめぐり合わせとしか言いようがない。9回に登板するのを見越して、これまで名勝負を繰り広げてきた坂本勇人(31)、WBC日本代表でチームメイトだった中島裕之(38)を代打に送り込んだ粋な“原采配”で球場を盛り上げました。坂本にいたっては、今季のフォームとは異なり、藤川の全盛期と言われる2010年頃のように、左足を大きく上げるフォームでフルスイング。最後の対戦に花を添えていました」(スポーツ紙記者)
今季限りでユニフォームを脱ぐ阪神・藤川球児投手(40)が甲子園のマウンドに立ったのは11月10日の巨人戦。9回4点ビハインドながら、全球ストレートで2三振を奪い、三者凡退に打ち取って現役生活に幕を下ろした。試合後には約1時間にわたって「引退セレモニー」が行われ、バックスクリーンのビジョンには、これまでの華々しい活躍をまとめたVTRが映し出された。
「紹介VTRが流れたあと、藤川投手が満を持してグラウンドに登場。その後、阪神OBや同年代を過ごした名選手たちのビデオメッセージが流れました。“岡田政権”でJFKを担ったジェフ・ウイリアムズ氏や久保田智之氏の映像に続いて、城島健司氏、シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手、ソフトバンクの和田毅投手、中日OBの岩瀬仁紀氏とそうそうたるメンバーがビジョン越しにねぎらいの言葉をかけていました」(前出・スポーツ紙記者)
そして7人目の“球界レジェンド”の映像が映し出されると、甲子園で大きなどよめきが起きた。現れたのはスーツ姿の清原和博氏だ。そして次のようなコメントを寄せた。
「藤川投手との思い出といえば、あの東京ドームでの物議を醸したあの事件です。藤川投手は何も悪くありません。サインを出したのは矢野監督です」
これには当の藤川投手とベンチの矢野燿大監督も苦笑い。
「これからはゆっくりと肩、肘、心を休めて新たな人生に向かってください。本当にお疲れ様でした」と、しめくくると球場は大きな拍手に包まれた。
清原氏が語った“あの事件”について、球界関係者が解説する。
「2005年4月21日に清原さんが藤川投手と対戦した際、フォークで三振を奪われました。てっきり直球で勝負すると思い込んでいたのでしょう。清原氏は『なんで直球で勝負せんのや。チ×ポコついとんのか』と藤川投手を“口撃”したんです」
“男のシンボル”を引き合いに出した発言は当時、大きな物議を読んだが、清原氏はあえてそれをネタにすることによって、地元ファンをおおいに沸かせることとなった。
「引退セレモニーをいちばん盛り上げたMVP級の活躍。清原さんのサプライズ出演と渾身のトークは地上波のニュースでも取り上げられるのかと思ったのですが、10日のスポーツニュースは“全黙殺”。藤川投手の最後の投球とスピーチだけをオンエアしていました。執行猶予期間はとうに明けているので過去の犯罪については関係ないと思うのですが、“あの事件”を解説するには『チ×ポコ』というワードは不可避。今後も地上波で紹介できるかどうかは微妙なところです」(テレビ誌ライター)
とはいえ、藤川投手の最後の投球と清原氏のキワドイ祝辞を生で観覧できた甲子園のファンは幸せだったと言うしかない。
(平沼エコー)