コロナ陽性患者を受け入れてきたブランド大学病院ですら数十億円単位の減収で、先行きを絶望視する現状。都立病院も例外ではない。都立墨東病院で医療事務を担当していた職員が言う。
「院内感染で死亡者が出て、この仕事に就いて初めて死を覚悟し、夜も眠れなかった。地方公務員という恵まれた待遇でも、退職に迷いはありませんでした。看護師や看護職員のような手当もなく、危なくてやってられないので他の業種に転職します」
都内大型病院の院長は、こうした事態を招いた国の体制に怒り心頭だ。
「第2波に備えてコロナ専門病床を確保してほしいという厚労省との交渉会議がありましたが、現場は固まり続けました。まず、国の補償額の桁が違う。出席した病院側は、コロナ患者を受け入れたばかりに何十億円の損失が出たと訴えているのに、厚労省職員が提示するのは何千万円程度。小池都知事も3000床用意しろなどと言いますが、無理。コロナ専用病床が減ることはあっても、経営難に陥っている民間病院や私立大病院が増床させることはありえません。これ以上、職員に経済的、精神的、身体的な負担はかけられない。そんな時に『Go Toトラベル』を前倒しして、今度こそ地域医療は崩壊します」
さらに政府分科会では、衝撃的な議論があった。与党関係者が明かす。
「政府は国内移動だけでなく、中国や韓国の入国制限緩和も打ち出した。ダイヤモンドプリンセス号を思い出してほしい。陽性患者の隔離と治療は自国民だけでなく、国籍を問わず全ての人が対象。今、制限を緩和したら『日本では無料でコロナ治療を受けられる』と海外から陽性患者が殺到しかねない。日本の医療と健康保険制度は破綻する」
最後に、ペインクリニック開業医の悲痛な叫びを聞いてほしい。
「地域医療を担う開業医もコロナで大打撃を受けています。うちは末期ガン患者の在宅医療を支援してきましたが、クリニックをいったん廃業することにしました。アルバイトで麻酔科医としてやっていくなどして、コロナが終息したら出直します。駅近くのビルや商業施設で開業するクリニックはもうテナント料を払いきれません。患者さんは高齢者や末期ガンでどんなに苦しくとも病院に行くのが怖い。コロナに感染したら死ぬのがわかっているから、家から出られず満足な治療が受けられない。訪問診療を極力減らす人もいます。コロナでなくとも、手遅れになって亡くなる二次被害者がこれから出ますよ」
100年前のスペイン風邪では第3波までパンデミックが繰り返された。第1波では救えた命も、第2波で医療崩壊が起きて死者が飛躍的に増えた。そして第3波では、患者を診る医師と看護師が誰もいなくなった。歴史は繰り返すのか。
補償の出し渋り、病院の経営悪化、そして相次ぐ医療従事者の“戦線離脱”で、コロナ陽性患者の受け入れ先はなくなりつつある。