戦後初となる緊急事態宣言が発令された。銀座の百貨店、新宿の映画館、新橋ガード下……街の灯が消え、首都東京はまさに戒厳令下そのものだ。そして不要不急の外出自粛で八方塞がりとなったニッポン列島に、今度は経済危機の赤ランプがともった。コロナ禍よりも恐ろしい未曾有の大恐慌の嵐が吹き荒れるというのだ。
「国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある事態が発生した」
4月7日夜、安倍晋三総理がついに、コロナ対策の最終手段となる緊急事態宣言を発令した。官邸詰め記者が説明する。
「景気浮揚策が最優先となる安倍内閣では、もとより非常事態宣言だけは避けたい方針でした。麻生太郎副総理兼財務相は『ロックダウンなどしたら経済が完全に止まってしまう』と猛反対していた。緊急事態の対象となる7都府県だけで日本の全GDPの半分を占めるだけに、5月6日まで1カ月の自粛による経済的損失は6兆円以上と言われる。昨年秋の消費増税以降、悪化をたどっていた日本経済にさらに追い打ちをかけ、7年半続いた安倍政権も吹っ飛ばすことにつながってしまう」
日に日に感染者を増す首都東京の医療崩壊も近く、苦渋の決断だったという。
「同時に政府は総額108兆円の緊急経済対策を打ち出した。これは09年のリーマン・ショック後の経済対策と比べて2倍規模となる異例の措置になります。とはいえ、まったく、自粛と補償がセットになっていない。例えばコロナにより月収が減った家庭に30万円支給することになっていましたが、その条件は見かけ倒しで、もらえない人は実に多い。恩恵少なしのカラ対策との声もあったため、結果、取り下げる方針となりました」(官邸詰め記者)
経済優先を忖度するゆえに、居酒屋、理・美容院など自粛で売り上げガタ落ちのサービス業は、都内では休業要請対象から外されたが、どれほど客足が戻るかは未知数。上級国民には厚く、下々をむげにするのが「アベノジゴク」の実態のようだ。
こうした政府の対策を問題視するのが、経済評論家の佐藤治彦氏だ。
「108兆円という額にダマされてはいけない。ホテルや旅館など観光業、スナック、居酒屋など飲食店は今すぐにでもつなぎ資金が欲しいところ。ところが政府の対策はこうした溺れている人を目の前にし、『浮き輪を用意したので安心してください。ついては、泳げないことを証明してください』と言っているようなものなのです」
4月16日、安倍総理は国民1人あたり10万円を給付するとの意向を示したが、目先の現金にだまされてはいけない。
条件つきではあるが、すでにロックダウンを実施しているフランスなどは給料を100%、イギリスも80%補償することを発表している。そのため市民は経済的に余裕を持って自粛生活に努めることができるのだという。
ところが日本では完全なロックダウンもなし、その代わり補償も不十分で、不安と不信をあおる一方の愚策を繰り出している。すでに海外からも失笑の的になっているのだ。