《朝までコロナ専門会議》(3)官邸は「専門家の見解」をでっち上げていた

B 西浦教授の試算ではじき出された死者数が43万人。つまり、ランセット論文から浮かび上がってきた83万人という死者数は、大きな衝撃を持って受け止められた試算のさらに2倍近い数字に相当します。まさに驚愕の死者数です。

C 結局、3密防止の徹底で今の感染爆発を下火にできたとしても、新たな感染爆発の波が繰り返されることで、日本国内だけでも83万人以上の死者が出てしまうわけです。にもかかわらず、政府はこれらの事実を隠蔽することに血道を上げて、国民を欺き続けている。

D 安倍官邸は「とにかく医療崩壊だけは起こすな」の一点張りでやってきましたからね。治療を受けられない重篤患者が自宅や路上でバタバタと倒れていく。そんな地獄絵が展開されれば、政治的にも一巻の終わりになると考え、PCR検査(コロナ陽性か陰性かを判定する検査)の実施数を意図的に抑え込んできたという事実があります。

─意図的に、ですか。

D そのとおりです。PCR検査については、さいたま市の保健所長が「病床が満杯になるのを避けるため、条件を厳しめにして実施していた」と口を滑らせて問題になりましたが、これはさいたま市に限った話ではありません。PCR検査の実施数を抑え込めば、陽性と判定される感染者数そのものも減り、当面の医療崩壊を先延ばしすることができる。安倍官邸は「医療崩壊を起こさない程度にPCR検査の実施数をコントロールしろ!」と、厚労省を通じて全国の保健所に大号令、圧力をかけていたと聞いています。

A だとすれば、入り口となる各保健所の段階で、PCR検査を実施する患者を選別することも可能になりますね。例えば、陽性になりそうな患者を検査から間引きして、陰性になりそうな患者を検査に回すとか。官邸や政府がそこまで手を突っ込んでいたとすれば、緊急事態宣言後の感染者数の伸びを小さく見せかけるなど、情報操作も自由自在ということになりますが。

D ご明察のとおりで、官邸はそこまで手を突っ込んでいたとも聞いています。それどころか、接触割合の削減目標について、西浦教授がツイッターで「7割は政治側が勝手に言っていることで、私は一切言及したことはありません」とバラしているように、官邸は専門家らが言っていないことまで、専門家の見解としてアナウンスしているのです。

─ただ、接触機会を8割以上減らすことができた場合、一定の効果は期待できるのではないでしょうか。

B 目の前にある感染拡大の波は、なんとかやり過ごせるかもしれません。しかし先ほども指摘したように、次の波、そのまた次の波が押し寄せることで、これから何年にもわたり、最終的な延べ死者数は83万人以上にも達してしまいます。しかも、緊急事態宣言の発出後も接触機会減が7割にも達していないという事実を考えあわせると、目の前にある現在の波すらやり過ごすのは難しい、ということになります。

【座談会出席者】
A=感染症の専門医
B=公衆衛生学の専門家
C=危機管理の専門家
D=政府関係者

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