「ニッポンノワール」シングルマザー家庭の描き方に疑問符

 警察内部の地下組織・ニッポンノワールの正体が少しずつ明らかになってきた。11月24日に放送されたドラマ「ニッポンノワール -刑事Yの反乱-」(日本テレビ系)の第7話では、これまでの伏線が次々と回収され、視聴者の興奮度も増しているようだ。

 ニッポンノワールの正体を探っていた碓氷薫刑事(広末涼子)は3年の捜査を経て、自分の父親で元警察庁長官の碓氷政明が組織に関与していると確信。そして自分と遊佐清春刑事の子供である克喜が、ニッポンノワールの手により人格改造されていたことも知り、自らを責める場面も放送された。だがシングルマザーとして克喜を育てた薫の回想場面に対し、疑問が寄せられているというのだ。家庭問題に詳しい女性誌ライターが話す。

「劇中では9歳の克喜を、刑事である母親でさえ手が付けられないほどに粗暴な性格の子供として描写。そして母親の薫が不登校について克喜を問いただす場面では、激昂した克喜が包丁を持ち出して母親を『殺す』と脅す場面もありました。制作側としては驚くほど素直になった人格改造後と対比させたかったのでしょうが、あまりに粗暴な克喜の姿はシングルマザーについて偏見を助長しかねません」

 劇中では包丁を持ち出した克喜に絶望した薫が、もう耐えられないとして克喜を実家に預け、一週間の出張へ。すると、母親の捜査書類から人格改造プログラムの存在を知った克喜が、自ら被験者になることを選んだというストーリーが描かれた。

「その結果、克喜は大人しくて良い子になったものの、薫は『表情のないあの子を見るのがツラくて、目を背けるようになって、私のせい、全部私のせい』と自らを責めることに。この場面もまた、問題ありと指摘せざるを得ません。シングルマザーの中には、子育てですべてを抱え込んでしまい、何か問題があるたびに“父親がいれば”“私のせいだ”と自責の念に駆られる例が少なくないからです。本作ではそんな母親の苦悩を問題提起として描写するならまだしも、ニッポンノワールという組織の異様さを浮き彫りにする導入として使われているだけ。結局、シングルマザーという設定は物語の舞台装置にしかなってないのです」(前出・女性誌ライター)

 フィクションに目くじらを立てるなという意見もあるが、フィクションだからこそ、こうしたステレオタイプの偏見が視聴者に刷り込まれやすいとも言えるのではないだろうか。

(北野大知)

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