香港情勢を懸念するアメリカの足元でもグーグル社員による抗議デモが!

 香港の抗議デモに対してアメリカでは上下両院議会で人権と自治をチェックする法案が可決、これに中国政府が反発を示して、さながらベトナム戦争のような東西抗争時の争いの様相を呈しているが、そんな“古くて新しい争い”は、アメリカ足下の最新テック企業でも行われている。

  11月22日に予定されていたグーグルでの従業員による抗議デモは予定通り、約200人ほどの社員がサンフランシスコの本社前に押しかけて行われたようだ。抗議内容は、その前にも行っていた抗議活動に加わった社員2人に対する休職処分を撤回せよというもの。主催者側は、「会社による野蛮な脅迫行為だ」と声を荒らげていた。

 実はグーグルでの抗議活動は1年以上というロングランで行われ続けてきた。

「ちょうど1年前の11月、本社社屋周辺に広がる公園に数千人の社員が集まり、シリコンバレーの中、デモ行進が行われたんです。きっかけは1週間前にニューヨーク・タイムズに掲載された記事。そこには、アンドロイドOSの生みの親であるアンディ・ルービンが行ったとされるセクハラの詳細と、結局、ルービンは辞職に追い込まれるのですがその際、90億円以上の退職金が支払われていたことが報じられていたんです」(ITジャーナリスト)

 その前から伏線はあった。18年4月には会社が米軍にAIを導入するための国防省の取り組みに参加することに異を唱えて契約継続にストップをかけたこともあれば、その2カ月後の6月には、一旦は停止していた中国向けの検索エンジンを再開しようとしたことに対しても反発してやはり取り止めさせた。一部社員は退職し、1000人の社員が公開書名に応じたのだから、会社としても看過できず、また従業員は力を得た。

「以後、従業員側はセクハラの強制仲裁の停止や給与格差の是正、人事の要求など会社に様々な要求を突きつけ続けてきた。そんな中での社員2人に対する休職処分だったために、従業員としては受け入れられないわけです」(同前)

 今回の抗議、対立が牧歌的な“諍い”から高度な“情報戦”に移行していることも示しているようで、抗議の主催者側は「(会社は)社員監視の新たなツールを導入しようとしている」とも述べている。会社側が、社内用Chromeのイベントカレンダーに10部屋以上あるいは100人以上のイベントを作成した場合、そのスタッフが自動的に報告される拡張機能を組み込んだというのがその理由らしい。

 グーグルで生じたこの「社会運動」、実はGAFA内部や他のテック企業にも飛び火している。アマゾンとマイクロソフトでは、会社が政府・入国管理局に顔認識技術を提供することに反対したり、フェイスブックでは根拠不明の政治広告の掲載も許容するザッカーバーグに250名以上の社員が署名した公開書簡を送って非難するなどしている。

(猫間滋)

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