「忍者式」健康法でみるみる体が蘇る(2)金メダリストを支えた「忍者指」

 忍者が野山を駆け巡ったり、長距離を走破するための呼吸法が『二重息吹(ふたえいぶき)』だ。おへその5センチくらい下方にある丹田(たんでん)に意識を置くことで横隔膜が鍛えられ、酸素の摂取量も増えて持久力やスタミナが高まるという効果がある。

「『吸う・吐く・吐く・吸う・吐く・吸う・吸う・吐く』という呼吸で、歩きながら動きに合わせてリズミカルに繰り返していくうちに体が覚えていきます。丹田は生命エネルギーが集まる場所で、この丹田を作る『二重息吹』は体幹トレーニングにもなるので、姿勢もよくなり、身のこなしも敏捷になります」(川上氏)

 また常に敵からの攻撃に備えなければならない忍者は、短時間で体力を回復したり傷を治す独自の方法を編み出している。それを応用して抜群の効果を上げているのが、芳原指圧治療院(東京都新宿区)院長、芳原雅司氏(47)が行っている「忍者マッサージ」だ。芳原氏はアントニオ猪木、長州力、中日ドラゴンズの選手など名だたる面々が施術を受けていた師匠、右近克敏氏のもと、少量の日本酒を指につけて痛みのある場所をさすることで不調を改善する技術を学んだ。

「そのルーツは甲賀忍者の末裔で『最後の忍者』とも呼ばれた藤田西湖氏が、スパイ養成機関の陸軍中野学校の教官時代に教えていた忍者由来の秘術。それを学んで諜報員となった小山田秀雄氏は、日中戦争の時に上海で捕らえられ、ひどい拷問を受けるのですが、死ぬ前の希望としてもらったコップ1杯の日本酒を使って自分にマッサージを施し、忍者さながらの脱獄劇を成功させて帰国。その後は治療家になり、右近氏にその技術を継承しました」

 最短15秒というスピーディな施術で患部の痛みを取るのが「忍者マッサージ」の特徴だが、これは血行促進と消炎作用がある日本酒とマッサージの相乗効果によるものだ。日本酒は米麹のみで作った純米酒で、ベタつかない辛口を使用。自分の住んでいる土地の湧き水を使った地酒は特に体になじみやすいという。ねんざやぎっくり腰など炎症が強い症状の場合は、より鎮静効果の高いにごり酒や酒粕を使っている。また施術の際の指遣いも独特だ。

「忍者指という4種類の指の形を用いるのですが、中でもよく用いる基本形が『二本重ね』。重ねることによって指の腹を固くして一瞬で強い刺激を与えられるんです。日本酒をつけて数秒ほど患部をさすると、コリコリとした小さな塊が浮き出てくるのですが、さらにさすると塊がスーッと消えて痛みや不調がなくなります」

 新日本プロレスのトレーナーなどを歴任している芳原氏のもとには「明日までに治したい」と、即効性のある忍者マッサージを求めて駆けつける有名スポーツ選手があとを絶たない。

「中京女子大学(現・至学館大学)レスリング部のトレーナー時代には、吉田沙保里選手や伊調馨選手が国内の試合やオリンピックに行く直前まで調整をしていました。プロレスの棚橋弘至選手は、試合の前日にひどいギックリ腰になったのですが、完治してメインイベントで活躍できました」

 忍者マッサージは、肩凝りや首凝りにも有効なので、気になる人は一度、治療院を訪れてみてはいかがだろうか。

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