トランプ大統領が引きずり込まれる「イラン・イスラエル戦争」イラク戦争よりヤバい泥沼

 6月19日の時点では、「2週間以内に決める」と、イランへの直接介入について語っていたトランプ米大統領が22日、突如イランの3つの核施設への攻撃を実行した。

 EUを通じたイランとの外相間交渉が行われる中での米国による攻撃参加は初のこと。今後のイラン側の対応しだいでは、中東のみならず世界に深刻な影響を及ぼす危険性が高まったことは間違いない。外報部記者の話。

「米メディアの報道によると、今回米軍が攻撃したのは山奥に隠されたフォルドゥ燃料濃縮施設を含む主要核施設3か所。いずれもB2ステルス爆撃機や潜水艦からで、地下を貫通する特殊爆弾『バンカーバスター』が使われたようです。米国とイランは長きにわたり複雑な歴史を繰り返してきましたが、1979年の国交断絶以降、互いを完全な敵国として認識。ただ、両国ともに周辺諸国への影響力の大きさは十分理解しているため、イランの核開発に対しても、米国は警告はするも事実上黙認するスタンスをとっていました。しかし、イスラエルがイランへの直接攻撃を始めたことで、結果、米国がこの戦闘に引きずり込まれる形になってしまった」

 米国による空爆の後、イランのアッバス・アラグチ外相は、「イランには自国の主権と国民を守るために正当な報復の権利がある。米国の攻撃は無礼千万。永続的な結果をもたらすだろう」と怒りをあらわにしている。

「現状、イランが米国本土まで届くような武器を持っているとの情報はありません。ただ、米国はイラクをはじめ、カタール、クウェート、サウジアラビア、シリア、バーレーンなどに軍事基地を展開しており、そこには3万~4万人程度の兵士が駐留している。今後、イランがそれらの軍事基地に攻撃を仕掛ける可能性は高いでしょうね」(同)

 さらに、イランはホルムズ海峡を封鎖するために必要な海軍戦力を保持しているため、ペルシャ湾内の米海軍艦船が封じ込められ、身動きできなくなるケースも十分に考えられる。

「トランプ氏は以前にもイランとの一触即発の場面を回避したことがありますが、そこには2001年のブッシュ大統領と同じ轍を踏みたくないとの思いがあるから。当時、ブッシュ氏はイラクが大量破壊兵器を持っているとの虚偽情報によって大きな戦争を勃発させ、結果、多くの米国人兵士が亡くなりました。トランプ政権としても、それだけはなんとしても避けたいはずですが、今後イランによる米軍事施設攻撃がエスカレートした場合、引くに引けなくなる。軍事アナリストの中には、アメリカにとってイランとの戦争は、イラクやアフガニスタンとの戦争よりもはるかに困難で、抜けられない泥沼に引きずり込まれる恐れがあるとの見方もあります。パンドラの箱を開けてしまったとなれば、トランプ氏は任期中、この問題にかかりっきりにさせられる可能性もあるということです」(同)

 米国がイランの核施設を攻撃する数時間前、国営テレビに出演したイラン国家安全保障最高評議会のモフセン・レザーイ将軍は、「もしトランプが戦争に突入すれば、イランはアメリカの軍事基地を攻撃し、ペルシャ湾に機雷を設置して爆破し、ホルムズ海峡を封鎖する」との警告を発していた。米国の攻撃を受け、「正当な報復」としてイランが次に起こす行動に、全世界の視線が注がれている。

(灯倫太郎)

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