今や敵意むき出し…トランプVSマスクの公開舌戦はどちらが優位か

 6月5日に始まったトランプ米大統領とイーロン・マスク氏によるSNS上での醜い罵声の浴びせあいが激しさを増している。

 ニューヨーク・タイムズなどの報道によれば、事の発端は5月末、マスク氏が政府効率化省(DOGE)トップから退いた直後に起きた。トランプ氏が、マスク氏の側近であるジャレッド・アイザックマン氏の米航空宇宙局(NASA)の局長指名を突如撤回。これにマスク氏が激怒したことが始まりだという。

「マスク氏は130日間にわたって政府効率化省トップを務めたものの、その間も政権主要閣僚との間では常に衝突が絶えず、4月中旬には国税庁長代行の人事問題を巡り、ベッセント財務長官とひと悶着あった。その後、マスク氏がトランプ氏の減税法案を異議を唱えたことが、全面戦争勃発の引き金になったとも言われています」(国際部記者)

 トランプ・マスクによるSNSでの公開舌戦は5日から続き、《私がいなかったらトランプは選挙で負けただろう。恩を仇で返す》と口撃するマスク氏に対し、トランプ氏も《イーロンに与える政府補助金と契約を切る》と威嚇。

 さらにトランプ氏は6日のABCニュースとのインタビューで「我を忘れたあの男の話か。彼は出てきて話したいだろうがいまは別に関心がない」とばっさり切り捨てると、翌7日のNBCニュースとの電話インタビューでも「私は別の仕事をするのにとても忙しい。彼と対話する意向はない」とマスク氏との関係回復を望まないと断言。もはや決別は動かしがたいものとなったようだ。

「ただ、トランプ氏のトゥルース・ソーシャルのユーザーは実質630万人程度。対してマスク氏のXユーザーは推定でも6億に上るともいわれています。しかも、ストレートな表現を使わず揶揄に留まるトランプ氏に対し、マスク氏は敵意むき出しで、真偽不明な情報も圧倒的な量で次々と投稿、『いいね』を稼ぎ続けている。発信力という意味では、マスク氏が圧勝といったところでしょうね」(同)

 しかし、マスク氏が運営するスペースXなどの企業と連邦政府とが結ぶ契約を撤回する権限をもっているのも、トランプ氏だ。関係が完全に破綻すれば、あるいは契約そのものがなしになる可能性もゼロではない。

「現状、トランプ氏はその部分については明言していません。ただ、インタビューでは『マスク氏が野党・民主党側に資金を援助した場合、深刻な結果に直面することになるだろう』とけん制しています。それよりも一部では、トランプ氏がマスク氏について周囲に『ひどい麻薬中毒者』と呼び、側近にはマスク氏の言動が薬物の影響による可能性があるとして、調査を依頼しているとの報道もある。今後はマスク氏の薬物使用疑惑を巡り、舌戦が繰り広げられる可能性もあるでしょうね」(同)

 米ブルームバーグは6日、トランプ氏が「友情の証」として購入した赤いテスラも売却する、との記事を報じているが、坊主に憎けりゃ袈裟まで憎い、とはこのことか。

 SNSユーザーのなかには、《これからの両者による全面戦争が楽しみ》といった不謹慎な声もあるが、2人の亀裂が鮮明になる中、またもや世界が振り回されるようなことにならないことを願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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