この時期、食パン好きを悩ませる商品選び/佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」

 私の住む街には、おしゃれな店構えのパン屋さんが数多くある。どこも焼きたてのおいしいパンを売っているのだが、そういうお店はパン屋さんとは言わず、「ベーカリー」とか「ブーランジェリー」という。

 お店に入ってみると、カレーパンやアンパン、もちろん食パンなども売っているのだが、このところどんどん値上げが進んで、最近は菓子パンや調理パン1つで300円は当たり前。食パンは400円もする。「高いなぁ」と思う反面、購入している人も多い。私は時々フランスパンのバケットやクロワッサンを買うが、今はほとんど買わない。値段が高いからだ。

 正直、買えないわけではないが、どうしても抵抗感がある。もっと言わせてもらうと、スーパーやコンビニのパンも値上げはされたが、ベーカリーのパンよりも値段は手頃。それに企業努力もあって、私が子供の頃と比べたら、何とおいしくなっただろうと思う。

 お気に入りの食パンはパスコの「超熟」やヤマザキの「ロイヤルブレッド」。おいしいだけでなく、スーパーなら1斤で200円を下回る価格で買える。また、多くのスーパーでは「プライベートブランド」として、大手パンメーカー製で、もっと手頃な価格の食パンも販売している。物価高の時代に助かっている人も多いはずだ。

 菓子パンにしても、長い間100円以下だったが、ウクライナ戦争で小麦粉が高くなり、燃料費も大きく上がったこと。そして日本が脱デフレになってきたことで、今では130円になった。それでもベーカリーに比べると相当安い。そして十分においしい。

 私はよく海外旅行に行くが、少なくともアメリカやヨーロッパの主要国では、こんな価格で買うことはできない。菓子パン1つ500円なんてこともザラだ。

 こんな計算をしてみた。6枚1斤の食パンを毎朝トーストで1枚食べるとする。週に5~6日、年間300日食べるとすると、毎週1斤買うことになる。180円なら年間で9000円。これが、おしゃれなベーカリーの400円の食パンだとすると2万円だ。3人家族なら年間で3万3000円も違ってくる。

 時々、6枚でなく3枚入りの食パンを買っている人を見ることがある。6枚入りが180円でも3枚入りは110円だったりして割高だ。きっと1人で1斤は食べきれないとか、日にちが経てば味が落ちてしまうと思っているからだろう。

 もし、トーストにして食べるのであれば、食パンをフリーザー用のビニール袋に1枚ずつ入れて冷凍しておけば、買った時とほぼ同じ味わいを楽しめる。

 私はどちらもおいしいと思っている「超熟」か「ロイヤルブレッド」を購入するのだが、スーパーの値段は変動するため、その時、手頃な値段のほうを選んで買うようにしている。

 しかし、2月からの3カ月間は「ロイヤルブレッド」ばかりを購入している。ヤマザキ「春のパンまつり」があるからだ。

 これがよくできている。「ロイヤルブレッド」は2.5点の点数シールが貼ってあり、3カ月の12週間、1週1斤でちょうど12個買うと30点が集まり、松たか子がニッコリ笑って宣伝している白い器が必ずもらえる寸法だ。今年は「白いデリシャスボウル」。アルク・フランス社製だという。

 ところが、この期間中は「超熟」のほうが安いことが多い。3カ月間だけとはいえ、値段にかかわらず「ロイヤルブレッド」を買うのは決して得ではないとわかっている。だから今年こそ、点数を集めるのはヤメようと思っていたのだが、今年もハマってしまった。途中まで集めるとヤメられないのだ。

 現在25点。今年ももうすぐ松たか子の白い器がもらえそうだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。最新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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