4月16日(日本時間17日)にホワイトハウスで始まった日米関税交渉。会談後、トランプ大統領がSNSなどで「大きな進展があった」と投稿し、石破茂首相も「次につながる協議として評価している」と安堵の表情を見せた。
そんな中、今回、日本代表団の顔として交渉に臨んだ赤沢亮正・経済再生担当相には、高い評価と懸念の声が交錯している。
その評価や懸念を記す前に、まずは赤沢氏がどのような人物なのかを見てみよう。
赤沢氏は、祖父で元自治相の故・赤沢正道氏が地盤とした鳥取2区選出の議員。東京大学法学部を卒業後、旧運輸省(現・国土交通省)に入省したエリート官僚で、航空行政や郵政分野を経て、2005年に小泉純一郎政権下、郵政民営化に反対した自民党議員への「刺客」として立候補、初当選。現在は7期目を務めている。自民党関係者の話。
「あの時、東京生まれで選挙区に知り合いがいなかった赤沢氏を助けたのが石破氏だった。以来、赤沢氏は“趣味は石破茂”というほどの側近となり、総裁選で何度も敗れた石破氏のもとから多くの仲間が離れていった中でも、唯一支え続けた。その結果、石破政権発足とともに、悲願だった初入閣を果たした。だが、そこから“暴走”が始まり、官邸や霞が関では陰で大ブーイングが起こっている」
実際、官邸に出入りする官僚たちの間では、こんな話も囁かれている。
「石破氏が昨年首相に就任するや否や、官邸に“赤沢部屋”なる特別室を設置し、各省庁の審議官クラスを集めて国や省庁の問題点を精査し、首相や官房副長官らと直接協議していた。これが政権の“二重構造”として問題視されました」(政治記者)
この批判を受け「赤沢部屋」は自然消滅したが、その後も赤沢氏は石破氏の側近として存在感を発揮し、トランプ関税の交渉役に大抜擢された。
今回の第1回目の交渉に関しては、「よくやった」と評価する声が目立つ。石破首相は報道通り、赤沢氏の交渉を手放しで称賛。自民党の小野寺五典政調会長も「関税撤廃を強く求めることができた。1回目としては非常に成功裏に終わった」と評価した。
一方、「批判」の声も根強い。
立憲民主党の野田佳彦代表は、赤沢氏による関税交渉後の「(自身は)格下も格下。話をしてくれたことは本当に感謝している」とのコメントに言及し「『格下』発言は不適切。国を背負って交渉に臨む以上、何するものぞという気迫を見せてほしかった」と批判。それ以上に、霞が関や自民党内からは次のような懸念の声が広がっている。
「これまでも赤沢氏は大臣就任と同時に“石破氏の側近”としての存在感を強調し、霞が関や“反石破派”からは疎まれていた。今回の交渉を無難にこなしたことで、さらに鼻息が荒くなり、“官邸のラスプーチン”ぶりを一層発揮して大暴走するのでは──との不安が蔓延している。官邸内でトランプ氏からもらったMAGAキャップをかぶって暴れ回られたら、たまったものではない」
石破首相は、対トランプ関税、為替交渉、そして身内のコントロールを含め、今後いかにして国益を守っていけるか。手腕が問われている。
(田村建光)