悪質な法律事務所も!「借金を減らせます」広告を簡単に信用するな/佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」

 借金に悩む人は多い。消費者金融からお金を借りている人は総人口の1割くらいと言われる。今の時代、給料が上がるのは、日本の働く人全体の3割程度が勤める大企業の賃金。それも正社員の給料とボーナスばかりだ。

 借金をしている人の多くは、決して贅沢な生活をしているわけではなく、日々の生活費が足りなさすぎてお金を借りる。最初は1社から借りていたけど、それが返せなくなると、お金を返すために他社からも借りて、また、他のところから借りる─というふうに、多くの消費者金融から借金をするようになっていく。

 こうして借金の泥沼にはまって返せなくなると、毎日のように返済を求める電話がかかってきて、仕事も日々の生活も追い込まれてしまう。24年春の調査だと、3社以上の消費者金融を利用している人は140万人以上と、1年で1割近くも急増しているという。

 借金で困っていると目につくのが、スマホなどに表示される弁護士や司法書士事務所などのネット広告。広告には2種類あって、1つは「過払い金の返還請求を手伝う」というもの。かつて年40%などという高金利の消費者ローンやクレジットカードローンなどを利用していた人で、本来は支払う必要がない、余分に支払った利息を返してもらうというものだ。

 もう1つのメインが「借金でお悩みの方の借金を減額できます」などというもの。広告には、こんなに借金が減ったなどと経験談まで載っている。そして簡単に借金を減らせるか診断できるとあり、データを入力していくと、多くの場合「大幅に借金を減らせる可能性があります」となる。

 このように名前や連絡先などを入力すると、向こうからメールや電話で連絡がきて「うちと契約してくれれば借りた先と交渉して、返済の延長や利息カットなど、任意整理の交渉をします」と勧誘される。

 ありがたい! 借金で困っている人には、光が差したと思うはずだ。

 ところが、日弁連や日本弁護士連合会が「このような広告で借金減額をする法律事務所の中には、悪質と思われるものも含まれる」と注意喚起している。

 どういうものかというと、その多くが事務所でのきちんとした面談もなく、ネットや電話だけで手続きが済む。そして、今後は法律事務所を通してお金を返済するように言われる。それに従うと、確かに毎月支払う金額は減るし、借りた先からの借金返済を求める連絡もこなくなる。

 しかし、もともと生活に追われているわけで、法律事務所への返済すら厳しくなり、支払いが遅れたり滞ったりすると、法律事務所側から「辞任します」と言われてしまう。

 そうなると、元々借りていた消費者金融からの返済請求が再開されることになるのだが、法律事務所と契約する前よりも多くの金額を請求されることがある。理由は、それまで法律事務所に払ったお金の多くが、任意整理をする弁護士などの報酬に回され、借金返済には少ししか充てられていなかったから。そこで初めて“悪質な弁護士だった”と気がつくのだ。

 弁護士などは困った人を助けてくれる善意の人という思い込みからか、簡単に信用して「いいようにしてくれるだろう」と、丸投げするのは要注意である。

 法律事務所を通じて返済する場合は、支払いの内訳をきちんと明確にすべきだ。借金を減額するためには弁護士と何時間も面談して、任意整理だけでなく自己破産など、いろんな選択肢から慎重に選ぶことが必要なのだ。

 借金の返済で苦しい人は各地の弁護士会の法律相談センター、法テラス(日本司法支援センター)などに相談するのがいいだろう。また、役所に相談する方法もある。多くの地方自治体では、ファイナンシャルプランナーや法律の専門家による生活再建の相談に乗ってくれるからだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。8月5日に新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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