江上剛「今週のイチ推し!」自民党の闇を暴いたスクープ 記者の厳しい目を忘れるな!

 自民党は少数与党になった。これから実施される都議選や参院選でも敗北が予想されている。その原因は「裏金」問題である。この「裏金」が自民党の組織犯罪であることを暴露したのが「しんぶん赤旗日曜版」である。本書は3人の記者が、丹念に資料を調べ、自民党の闇を暴いていくスリリングなドキュメントだ。

 始まりは記者の「違和感」だった。赤旗日曜版の2人の記者が自民党議員の政治資金パーティーを取材した。この議員がゼネコン業界にパーティー券を押し売りしている情報を入手したからである。

 調べるほど、一晩で2億円も荒稼ぎするなどボッタクリの実態が浮かび上がってきた。法律でパーティー1回につき、同一の企業や団体から20万円超の収入があれば、大口として政治資金収支報告書へ記載しなければならないと規定されているが、意図的に記載しなかったりする。明らかにごまかしである。なので彼らは「規正法違反不記載疑い」の記事を書く。

 彼らは次々と政治団体の収支報告書を調べ「不記載」の実態に驚く。「これは大規模な不記載事案になりそうだ」とデスクは2人の記者に更なる調査を命じる。そして「不記載」が意図的、組織的であることを摑む。彼らは「裏金」を刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授とタッグを組み、ついに大規模な「不記載」疑惑をスクープする。自民党の大物議員が「パーティー券のノルマ未達の際、派閥に数百万円寄付した」と彼らに答えたのだ。ところが、派閥の収支報告書には、この寄付金が記載されていない。まさか「裏金」になっているのではないか?

 ついに上脇氏の告発によって東京地検特捜部が「不記載」疑惑の捜査に乗り出す。特捜部が動きはじめると、他の大手メディアも動き出す。実際、最近のスクープは赤旗日曜版と週刊文春だけである。「文春砲」という言葉があるなら「赤旗砲」と言ってもいい。

 ついに、企業・団体によるパーティー券購入が「裏金」となっている証拠を摑む。政治家と派閥の収支報告書を調べたところ、政治家が企業・団体にパーティー券を購入してもらい、その代金を派閥に渡すと、派閥側から議員にキックバックされるという裏金作りのシステムを暴いたのである。もはや言い逃れはできない。自民党の閣僚経験者は「日曜版にやられた」と地団駄を踏んだ。「悪事千里を走る」ということわざを知らないのか。悪事は必ずバレる。彼らのような正義感に燃える記者がいるのだから。

 国会では政治資金規正法の改正案が了承されたが、どんな法律を作っても、法律を作る政治家がそれを守る気持ちがなければ、どこかに抜け穴を作るだろう。しかし、姑息に抜け穴を抜けようとしても、彼らのような記者の目が光っていることを肝に銘じろ!

《「実録・自民裏金取材『赤旗』が暴いた闇」しんぶん赤旗日曜版編集部・著/1540円(新日本出版社)》

江上剛(えがみ・ごう)54年、兵庫県生まれ。早稲田大学卒。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)を経て02年に「非情銀行」でデビュー。10年、日本振興銀行の経営破綻に際して代表執行役社長として混乱の収拾にあたる。「翼、ふたたび」など著書多数。

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