【ルポ】死ぬまで楽しむ「生活保護」のリアル実態(3)スナックママが通帳を管理

 山谷に後ろ髪を引かれつつ電車を乗り継いで神奈川県横浜市にある「寿町」へ移動。70年代初頭までは港湾労働者やその家族が暮らすドヤ街だったが、こちらも高齢者と生活保護受給者の街に変容していた。

「山谷と同じように高齢者や身元不明者の受け皿になっています。神奈川県だけでなく品川区や大田区の役所から寿町へ誘導されるケースがままあるようです」(國友氏)

 街中には韓国料理店やスナックが軒を連ねる。宵のうちにふらっと入った韓国スナックで出会ったのがオサムさん(仮名)=70代男性=。ケースワーカーに促されるままに都内から寿町のドヤに移り住んで3年目だという。

「朝4時前に起きて『暴れん坊将軍』の再放送を見るのがルーティン。10時過ぎには外で飲み始めてしまうけど、ランチタイムを過ぎたら眠たくなるからドヤに帰ってお昼寝するんだ。今も寝起きなんだよ(笑)。朝が早いから21時にはまた帰るよ~」

 チヂミや肉豆腐をツマみながらカラオケを楽しむこと小1時間。「ママ、明日も来るね~」と告げるやオサムさんはお代を払わずに帰ってしまった。まさか食い逃げ? それともツケ払い?

「一部の店では、客がママに銀行通帳を預けて、その口座から飲み食いした代金を引き落としているそうです。あくまでもママの善意によるボランティア。生活保護受給者の中には金銭管理がルーズな人が少なくありませんからね。時には飲食をせずにママに引き出してもらった生活費を受け取るために来店することも」(國友氏)

 ドヤ街の高齢化に伴う悩ましい事情も見え隠れしている。寿町の飲食店経営者が明かす。

「認知症やアルコール依存症などの患者も一定数いる。そのため、行政の監視のもとに、なかば後見人として店側が通帳を預かるケースはあります。保護費が振り込まれるたびに、店の人が銀行ATMまで同行して、パスワードを入力させて溜まったツケの分だけお金をおろすのです。他の店のツケをまとめて精算することも珍しくありません」

 21時過ぎに韓国スナックから河岸を変えるべく歩いていると、異様な盛り上がりを見せる店を発見した。店内には5~6人のシニアが2台のモニターに映るボートレースの映像を食い入るように見つめていた。

「寿町にはノミ行為をやっている店が数店存在します。近所に『ボートピア横浜』という場外舟券売り場がありますが、ノミ屋に昼間から入り浸っている人も少なくありません。ツケで賭け金を賄えるのが一番のメリットなんだとか。酩酊した状態では入れない場外と違い、ベロベロでも入れてくれるから酒を飲みながら気楽に長時間居られるみたい。一方で、配当金の上限を設定している店もあるだけに、大穴を当てても大儲けできるわけではないらしいけど‥‥」(飲食店経営者)

 闇夜にシニア男性たちの一喜一憂がこだましていた。生活保護のリアルは生かさず殺さずではなく、死ぬまでハッピーだった!?

*週刊アサヒ芸能2月6日号掲載

ライフ